21日、スイスで新エネルギー法の是非を問う国民投票が行われ、賛成58.2%、反対41.8%で可決された。投票率は、42.3%だった。新エネルギー法は、2050年までに脱原発を実現するため、再生可能エネルギーを促進し、省エネを推進する。
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横浜市出身。1999年からスイス在住。ジュネーブの大学院で国際関係論の修士号を取得。2001年から2016年まで、国連欧州本部にある朝日新聞ジュネーブ支局で、国際機関やスイスのニュースを担当。2016年からswissinfo.chの日本語編集部編集長。
今回可決された「新エネルギー法」は、エネルギー転換を目指す改正法案で、「エネルギー戦略2050」をベースとし、スイス国内にある原子力発電所5基の稼動を順次停止しながら、原子力発電所の改修や新設を禁じる内容となっている。スイス政府は、同法案を2011年の福島第一原発事故直後から年月をかけて慎重に策定し、連邦議会は昨年9月に承認した。ところが、右派の国民党が同法案に反対したことでレファレンダムが成立し、今回の国民投票に至ったが、最終的には国民の支持を得た。
新法は、原発に取って代わる再生可能エネルギーを促進し、2035年までに、水力や風力、太陽光、バイオマスなど多様な再生可能エネルギー源を組み合わせる「エネルギーミックス」にし、太陽光や風力発電量を現在の4倍にして電気の安定供給を図る。2050年までに脱原発を達成するため、水力発電(2050年目標、約55.9%)と水力以外の再生可能エネルギー(同年、約30.6%)を拡大し、不足分を天然ガス・化石燃料発電(同年、約13.5%)で補う。
また、それと同時に、2035年までに年間1人あたりのエネルギー使用量を2000年比で35%減らす省エネと、エネルギーの効率的利用の促進を目指していく。節電を促しながら、建物や自動車、電気製品のエネルギー効果を高めて燃料消費を削減し、エネルギー消費全体を抑える。
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(*図中の「毎時テラワット」は年間あたりの発電量)
今回この法案の是非で議論に挙げられたのは、消費者への負担。太陽光や風力発電のための補助金やそれらのエネルギーによる電力生産の少なさへの懸念から、消費者の電気料金が高くなるのではないかという不安の声があった。
法案に反対していた右派の国民党は、「エネルギー戦略2050」には2千億フラン(約22兆8694億円)かかり、電気代は4人家族では年間3200フラン(約36万円)に値上がりすると試算。投票前のキャンペーンでは、冷たいシャワーを浴びる女性のポスターを掲げるなどして、市民に反対を訴えていた。
一方で、脱原発と「エネルギー戦略2050」を進めてきた中心人物であるドリス・ロイトハルト環境・エネルギー相は、電気料金は1キロワット時につき1.5サンチームから2.3サンチームになり、 4人家族では年間40フランの値上がりになると試算。国民党の3200フランという数字は「全くの誤算だ」と主張していた。
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国民投票で新法が可決されたことを受け、ロイトハルト環境・エネルギー相は、スイスメディアに対して「原子力エネルギーを放棄することになった歴史的な日となるであろう」と述べ、喜びを表明した。新エネルギー法は、2018年1月から施行される。
スイスと国境を接するオーストリアではすでに約40年前から、ドイツでは2022年に脱原発することが決まっている。スイスもヨーロッパに広がる脱原発の風潮をゆっくりと適用していくことになる。
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IEA、スイスにEU電力市場への参入を推奨
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国際エネルギー機関(IEA)は8日発表したスイスのエネルギー政策報告書で、スイスは脱原発計画により低炭素社会を維持しにくくなると指摘した。欧州連合(EU)と交渉中の枠組み条約において、EU電力市場に加わる方向で交渉を進めるべきだと推奨した。
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日本とスイス 対照的な原子力政策
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東京電力福島第一原発事故から6年。スイスは2017年5月21日、原子力に拠らない未来をかけて国民投票を実施する。逆に当の日本は停止していた原子炉の再稼動に動き出している。この逆転現象の背景にあるのが直接民主制だ。
二国のエネルギー政策を取り巻く環境は共通する面が多い。日本とスイスはともに代表民主制を採る。輸出中心の工業立国であり、数十年間核エネルギーが重要な役割を担ってきた。2010年時点で両国とも原子力発電が電力総需要のほぼ3分の1を占めていた。
だが原子力の平和利用は核だけでなく現代社会を分裂させる。日本でもスイスでも、最初の原子力発電所の設立計画が動き出した1950年代、数百万人が危険な技術に反対してデモ行進をした。
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脱原発、再エネの技術革新と人間の創意工夫で10年後に可能とスイスの物理学者
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スイスでは21日、国民投票でエネルギー転換を図る政策「エネルギー戦略2050」の是非が問われる。これは、節電やエネルギー効率の促進、再生可能エネルギーの推進に加え、原発の新規建設の禁止を軸にしている。しかし、既存の原発の寿命には制限がないため、ゆるやかな段階的脱原発になる。では、40年といわれる原発の寿命はどう決められたのか?など、原発の問題点やスイスのエネルギー転換を物理学者のバン・シンガーさんに聞いた。
緑の党の党員で国会議員でもあるクリスチャン・バン・シンガーさんは、 物理の専門家として「世界の物理学者は戦後、原爆のあの膨大なエネルギーを何かに使いたいと原発を考案したが、二つの問題を全く無視していた。事故のリスクと核廃棄物の問題だ」という。
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リベラルで、安全、安価なエネルギー供給を崩してはならない
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5月21日の国民投票で問われる新エネルギー法は、巨額のコストがかかるうえ、手の届かない目標を掲げ、これまでに例のない規模で国民をコントロールするだろう。また同法は電力供給における目下の問題を解決するどころか、さらに深刻化させるだろう。国の電力システムへの介入に反対する「エネルギー同盟」のルーカス・ヴェーバー代表はそう語る。
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スイスのエネルギーに望みをかける
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スイス政府が発表した「エネルギー戦略2050」が実現すれば、スイスは安全でクリーン、かつ安価なエネルギーが生産できるようになる。また、スイスのエネルギー 分野への投資は雇用を促し、国の成長や繁栄につながる。こう主張するのは、再生可能エネルギーおよびエネルギー効率分野の企業や事業者団体を統括するAEEスイスのジャンニ・オペルト会長だ。
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第1回世論調査 新エネルギー法は可決の見通し
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スイスでは5月21日、国民投票で新たなエネルギー法の可否が問われる。スイス放送協会(SRG SSR)の委託を受けた世論調査機関gfs.bernの行った第1回世論調査によると、61%が脱原発を定める新エネルギー法に賛成と回答。投票率は45%と予想されている。
新たに策定されたエネルギー法は、脱原発と再生可能エネルギーの推進を掲げるスイス政府の「エネルギー戦略2050」を土台にしたもので、連邦議会ではすでに承認されている。第1回世論調査によれば、回答者の61%が賛成、30%が反対で、まだ決めていないと答えた人は9%だ。
新エネルギー法は、スイス国内にある原子力発電所全5基の順次廃止に加え、再生可能エネルギーの促進と省エネ推進に焦点を当てている。安全なエネルギー供給を保証し、化石燃料への依存を減らすことが目的だ。
有権者はすでに意見形成
調査を請け負ったgfs.bernは、第1回調査結果はあくまでも現時点での傾向を示すものだとしながらも、同機関のクロード・ロンシャン取締役会長は6日の結果発表で、新エネルギー法が可決される可能性が高いと述べた。
確かに、投票に向けた各陣営のキャンペーンは始まったばかりで、今後何か動きがあるかもしれない。だが、今回の調査結果が覆えるほどの変化はないとみられている。調査回答者の52%が「今後意見を変えるつもりはない」と答えているからだ。
「スイスでは、定期的にエネルギー政策に関する国民投票が行われている。そのため、今の段階ですでに有権者の意見が固まっていてもおかしくない」と、政治学者でもあるロンシャン氏は言う。今回の77回目の世論調査結果発表を最後に会長の座を退く同氏によれば、現段階ですでに有権者の意見が形成されているのが、今回の投票のカギだという。「第1回世論調査の数字としては、今までになく高い数字だ」
新エネルギー法をめぐる議論の内訳では、将来につながる雇用創出の見通し(賛成73%)、身近な再生可能エネルギーの使用(61%)、脱原発(54%)などが大きな支持を得ている。
反対派では、官僚主義への批判(63%)、コスト増(56%)などが新エネルギー法反対の主な理由として挙がっている。だが一方で、新法の可決により国のエネルギー供給が脅かされると考える人は回答者のわずか37%に留まった。
どこから見ても可決の見通し
有権者の意見がすでに固まっているということが、新エネルギー法可決が予測される唯一の理由ではない。
政党レベルで見ると、反対を表明しているのは、今回の国民投票のきっかけとなるレファレンダムを起こした右派・国民党(党員54%が反対)のみ。無所属を含むその他の政党では、各政党で賛成が60%を下回ることはなく、左派政党に至っては、緑の党で賛成83%、社会民主党で87%と、驚異的な数字が出ている。言語地域間での意見差もほとんどなく、賛成はフランス語圏で68%、ドイツ語圏57%、イタリア語圏68%。
また、平均的な収入と教育レベルを持つ「中間層」で賛成が多いことも、新エネルギー法可決が予測される根拠になるとロンシャン氏は言う。
ロイトハルト効果
新エネルギー法賛成派には、大きな切り札がある。大統領を兼任するドリス・ロイトハルト環境・運輸・エネルギー・通信相だ。脱原発とエネルギー戦略2050を進める中心的人物であり、調査回答者の65%がエネルギー政策においてロイトハルト氏を信頼していると答えている。
ロンシャン氏は、「大統領に対する支持率がこれほど高いのは、スイスの特徴だ」と話す。「例えばフランスでは、オランド氏やサルコジ氏、シラク氏でも、支持率はすぐに20%以下に落ち込み、再び支持率が上がることはなかった。そう考えると、支持率65%というのは驚異的な数字だ」
gfs.bernは、「政府やロイトハルト氏に対する信頼度が、今回の国民投票で有権者の支持を勝ち取る上で大きな影響を与えるだろう」と分析している。国民投票に関する世論調査
スイスインフォの親会社であるスイス放送協会(SRG SSR)の委託を受けて、世論調査機関gfs.bernが実施。
今回は3月20~31日の期間に1203人が電話で回答した。誤差の範囲はプラス・マイナス2.9ポイント。
在外スイス人は、データ保護の観点から調査機関が個人情報にアクセスできないため、調査対象外になっている。
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エネルギー戦略の是非をスイスの有権者に問う
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スイスの5カ所の原子力発電所を今後数十年かけて段階的に廃止するという新エネルギー戦略。その是非が有権者に問われる。
スイス国民党は19日、政府が2011年の福島の原子力発電所事故後間もなく立ち上げた「エネルギー戦略2050」に対するレファレンダムを申請した。
これまで100日間で集めた6万3千人以上の署名を提出し、全国投票に持ち込むという。投票は5月21日に予定されている。
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段階的脱原発や再エネ促進など、スイスのエネルギー転換を国民に問う
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福島第一原発事故を受け、スイス政府はエネルギー転換を目指す改正法案「エネルギー戦略2050」を立ち上げ、昨年秋の国会でようやく成立させた。原発に関しては、新しい原発は作らないが既存の5基の原発の寿命は限定しないとする「ゆっくりとした段階的脱原発」を決めている。しかしこの法案に対して反対が起こったことから、最終的に5月21日の国民投票で国民の判断を仰ぐ。
エネルギー戦略2050は、 スイスの包括的なエネルギー転換を図るものだ。そのため、段階的脱原発だけではなく、再生可能エネルギー(以下、再エネ)の促進やエネルギーの効率的利用を進めていく。政府の目的を一言で言えば、「スイス国内での十分で確実なエネルギー供給を保障し、同時に外国からの化石燃料の輸入を削減すること」だ。
再エネに関しては、太陽光発電や風力発電、バイオマス発電に加え、水力発電の促進も考慮されている。水力発電はスイスの主な発電源であったにもかかわらず、コスト面で採算が取れず最近赤字が続いていた。また、エネルギー戦略2050には、建物や自動車、電気製品のエネルギー効果を高める政策も含まれている。
ところがこうした大きなエネルギー転換に初期から反対していた右派の国民党が、エネルギー戦略2050に反対し、レファレンダムを起こした。レファレンダムとは新法が連邦議会(国会)で承認されてから、100日以内に有権者5万人分の署名を集めれば国民投票を行うことができる「権利」だ。
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