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スイスでスーダン停戦協議 5つのポイント

記者会見
米国のスーダン特使トム・ペリエロ氏は12日の記者会見で、スーダン軍がジュネーブ交渉に現れる「希望を捨てていない」と話した Keystone / Salvatore Di Nolfi

内戦の続くスーダンの停戦を目指す協議が14日、スイスのジュネーブ地方で始まった。米国が主導しスイスが共催する今回の和平協議は、16カ月にわたる紛争で両当事者がひとまず武器を置くことを目標に掲げる。だが協議の詳細は謎に包まれたままだ。

米国政府がスーダンに関する和平協議をスイスで開催することを正式に決定した7月末以来、協議の場所や成功の可能性、そもそも紛争の当事者双方が参加するかどうかといった詳細について、メディアはほとんど報じていない。スーダン内戦が始まった2023年4月以来、国内で約1100万人が避難を強いられている。

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スーダンで何が起きている?

スーダンでは2023年4月、アブドル・ファタハ・アル・ブルハン将軍率いるスーダン国軍(SAF)と、ブルハン氏の腹心だったモハメド・ハムダン・ダガロ将軍率いる民兵組織「即応支援部隊(RSF)」との間で激しい内戦が始まった。

歴史を少しさかのぼると、2019年に軍がクーデターを起こし、30年間にわたる独裁支配に終止符を打った。その後暫定政府が発足したものの、2021年に統治評議会が国を掌握した。ブルハン・ダガロ両氏も統治評議会に加わり、やがて対立するようになった。

両者の主導権争いは今も続く。スーダンの土壌に眠る金と石油が2人の権力欲をかき立てている。

過去16カ月で数万人のスーダン人が殺害された。避難民はほぼ1100万人に上り、中には複数回避難した人もいる。国連によると、200万人以上が国外に逃れた。

紛争地にはすずめの涙ほどしか支援物資が届かない。現地へのアクセスは著しく妨げられ、資金源も不足しているためだ。スーダンは地球上で最悪の人道危機の一つに陥っているが、世界で最も無視されていることの一つでもある。国連の人道支援機関や人道団体は国際社会の無策を非難する。人口の半分以上に当たる約2500万人が支援を必要としている。

ジュネーブの国連欧州本部では13日、数名の国連代表がスーダンで日常的に起きている恐怖体験について記者会見が行われた。爆撃や飢餓、性暴力に怯えて暮らす子どもたちもいる。

何について交渉するのか?

停戦協議は14日、ジュネーブ近郊で始まるが、詳しい場所は非公表だ。その焦点は、停戦の可能性と人道支援へのアクセス改善に置かれている。

米国がスイスとサウジアラビアの支援を受けて主導する新しい形式の協議だ。サウジアラビアのジェッダで行われた過去の失敗した交渉を受け、米国政府は今回の協議を人道的理由から取り持つと説明している。

ジュネーブでの協議は最長10日間続くとみられる。追って第2段の協議が開催される可能性もある。

なぜスイスで開催されるのか?

中立国であるスイスは和平交渉の主催に関して豊富な経験がある。12日にジュネーブで記者会見した米国のトム・ペリエロ・スーダン担当特使は、スイスは人道問題でも貢献できる可能性があると強調した。

人道支援を担う国連欧州本部の存在もスイス開催の理由であることは間違いない。7月には国連のラムタン・ラママラ・スーダン特使の招待に応じ、RSFとSAFの代表がジュネーブを訪問した。ただ人道支援や民間人の保護に関して間接的に協議されただけで、両当事者の直接の会談は実現しなかった。

協議の参加者は?

これに関しては答えがなく、最大の疑問となっている。現時点では、両当事者が協議のためにスイスを訪れるかどうかも明らかになっていない。

SAFは先週末、スイスでの停戦協議に参加しない旨を表明。SAFが支配する町からのRSFの撤退を協議出席の条件に挙げた。オブザーバーとしてアラブ首長国連邦(UAE)が出席することや、サウジアラビアが主導してきた過去の協議とは異なる形式で協議が設けられる点にも異議を唱えている。

ペリエロ氏は「私たちはSAFが会談に出席するという希望を捨てていない」と述べ、ジュネーブでの協議はサウジでの会談の「延長」となることを示唆した。

一方、RSFはジュネーブ交渉への参加を約束した。だがペリエロ氏によると、RSFの代表者は12日午後時点でスイスに到着していない。

協議は当事者の一方が不在でも開催される。ただその場合は正式な調停ではなく技術的な協議となり、停戦に向けた具体的な進展は複雑になるとペリエロ氏は語った。

国連とアフリカ連合、エジプトとUAEもオブザーバーとして出席する予定だ。

どのような成果が期待できる?

目標として明言されているのは、停戦計画の獲得と人道援助へのアクセスの改善だ。

だがペリエロ氏は「今週中にすべての問題を解決できる可能性は低い」と認めた。

フランス国立科学研究センター(CNRS)のマーク・ラヴェルニュ名誉研究部長は4日、フランス語圏のスイス公共放送(RTS)のインタビューで、協議の役割に疑問を投げつつも、「米国がついにバランスに重点を置くようになったのは前向きなシグナルだ」と強調した。「状況は非常に複雑で、当事者たちを同じテーブルに着かせる取り組みは今まで一つも成功していない」

ラヴェルニュ氏は、内戦は両陣営がスーダンの富を独占しようとする「利権戦争」になっていることが解決を難しくさせているとみる。「この種の問題に関して、外交官はやや無力だ」

政治的対立が解決する余地はない。アフリカ連合が関与し、米国政府の支援を受けているとペリエロ氏は語り、解決を左右するのは将軍ではなく、スーダン国民だとも強調した。

編集:Virginie Mangin、フランス語からのGoogle翻訳:ムートゥ朋子、校正:上原亜紀子

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