スイス国民議会(下院)は17日、ロシアのオリガルヒ(新興財閥)の資産を追及する主要7カ国(G7)の国際作業部会には参加しないことを決めた。
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ロシア資産の追跡のためにG7が設置した「ロシアのエリート層・近親者・富豪(REPO)タスクフォース」にスイスが参加するという動議外部リンクは、下院で101票対80票で否決された。
動議を提出した緑の党(GPS/Les Verts)のフランツィスカ・ライザー氏は 「スイスはロシア人顧客の資産を管理したり、商品取引の拠点であったりと、(制裁に関して)大きな責任を負っている。REPOへの参加は明確な政治的シグナルを送ることになっただろう」と述べた。
「スイスはウクライナを軍事的に支援することができない。その分、可能な範囲で行動を起こすことが重要になる」とも強調した。推計によると、制裁対象のロシア人の資産でスイスの銀行に預けられている額は1500億~2000億フラン(約25.5兆~34兆円)に上る。
だがスイスがこれまでに凍結したロシア資産は75億フランに留まる。ライザー氏は「これが国際的な批判を引き起こしたのは驚くべきことではない」と述べた。スイスには、対ロシア制裁の執行を担う正式な作業部会が存在しない。
社会民主党(SP/PS)のロランス・フェールマン・リエル氏は「スイスの参加は自律に対する脅威ではなく、スイスが制裁を真剣に受け止めていることを示す手段だ」と訴えた。「中立とは無関心を意味するものではない。REPOの決定に拘束力はなく、加盟した後もスイスはいつでもロシアに対する追加制裁に追随するかどうかを決断できる」
右派の恐怖
だが右派勢力を説得できなかった。急進民主党(FDP/PLR)のハンスペーター・ポルトマン氏は「スイスは制裁に関してすでにREPOを含む多くの国や組織と技術レベルで協力している。十分に役割を果たし、むしろ他国より優秀だ」と反論した。
「REPOはG7の政治的手段だ。すべての制裁を撤回するよう米国からの強い圧力を受けることになるだろう。仲介・調停国としての役割を根本的に弱めてはならず、スイスはこのまま引きずられていくべきではない」
連邦内閣(政府)も反対に回った。ベアト・ヤンス司法相は、所管するギー・パルムラン経済相の代理として答弁席に立ち、REPOとの協力は順調であり、今後も継続すると説明。さらに一歩踏み込む必要はないと強調した。
採決では国民党(SVP/UDC)と急進民主党(FDP/PLR)が賛成票を投じ、左派陣営を上回った。中央党(Die Mitte/Le Centre)と自由緑の党(GPL/PVL)の票は割れた。
スイスへの国際圧力
REPOは2022年3月にG7諸国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国)と欧州連合(EU)、オーストラリアが立ち上げた。これまで他国が参加したことはない。
スイス連邦政府はREPOへの参加を否定する見解を示している。連邦司法省が昨年2月、REPOが目的の一つに据えるウクライナ復興のためにロシア資産を没収することは、スイス連邦憲法に抵触するとの見解をスイス連邦内閣に伝えた。
これに対し、国際社会からの圧力が高まった。昨年6月、米連邦議会の欧州安全保障協力委員会(通称「米国ヘルシンキ委員会」)がスイスの対ロ経済制裁を批判した。
G7諸国もスイス連邦政府宛てに書簡を送り、オリガルヒの資産追及に関してスイスの協力強化を要請した。これに対し、連邦内閣はスイスで凍結された資産の額は国際基準から見て相当なものだと主張した。
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英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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