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ロカルノ国際映画祭 日本から2作品がノミネート

青山監督の「共喰い」は、性の欲求に突き動かされる篠垣遠馬(菅田将暉)の葛藤を描く Festival del film Locarno

第66回ロカルノ国際映画祭で15日、青山真治(しんじ)監督(49)の「共喰い」が世界初公開された。ロカルノを訪れている青山監督と主演の菅田将暉(すだ まさき)さん(20)は、この映画への思いをスイスインフォに語った。また、今回「リアル~完全なる首長竜の日~」を出品した黒沢清監督は、海外メディアならではの質問に意表を突かれたと話した。


 「共喰い」(9月7日から日本公開予定)がノミネートされたのは国際コンペティション部門。青山監督の映画祭参加は今回で4度目だ。15日に行われた世界初の上映会では、3千人を収容できる会場(Auditorium FEVI)がほぼ埋め尽くされた。上映前のあいさつで、青山監督は観客に「ロカルノは第2の故郷です」と、映画祭に再び戻って来た喜びを伝えた。

 前回参加した2011年、青山監督は「東京公園」で準グランプリに相当する審査員特別賞を受賞。今年は、暴力的な性癖の父親の血を受け継ぐ17歳の男子高校生の、血のつながりと性欲との葛藤を描いた作品「共喰い」を送り込む。

 父親の性癖を目の当たりにし、自分も暴力的な性行為に走るのではないかと苦悶する主人公、篠垣遠馬(しのがきとうま)を熱演した菅田さんは、国際映画祭に参加するのは今回が初めて。海外の観客のリアクションを見て、「そんなところで笑うのかと思ったし、そういう会場の雰囲気を感じると自分も笑える。日本では、僕はこの映画をディープだなと思って見ていたんですが、ここでは客観的に芝居している自分、一役者としてスクリーンにいる自分を見ることができました」と語る。

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悶々とする若者

 青山監督がこの映画で描きたかったのは、男の暴力に翻弄されつつも、それにしたたかに対抗していく女の姿だ。男の暴力は、戦争の暴力、戦後の暴力に通じると監督は考える。「この映画では、反戦主義者だった自分の母への想いを伝えたかった」と言う。

 映画の中では、男性の欲望を表すもの、また同時に女性が暴力に対抗する手段として、性行為が描かれる。そのため、遠馬と恋人、千種(木下美咲)が交わる場面や、父親、円と内縁の妻の琴子(篠原友希子)との性行為のシーンが幾度となく繰り返される。

 「これは性行為中心の映画ではなく、言葉も体も通じない対話、あり方みたいなものが漠然と描かれている映画です。性行為はその中のあくまで一つの要素に過ぎないのです」と青山監督。「(性行為が)愛のように見えてはダメなんです。これを踏み込んだところに愛があり、その先にこのストーリーの本質があるのです」

 撮影当時、菅田さんは19歳だったが、性行為のシーンを演じるのに恥じらいはなかったという。「これは遠馬の日常だと思って現場にいましたし、体も脳みそもそうなっていました。特に変な羞恥心はなく、菅田将暉に戻る瞬間はなかったです」

 性への強い欲求を抱える遠馬に、菅田さんは共感する。「高校生ぐらいの男だったらみんなああだと思うし。性的に悶々するだけでなく、日々の生活で感じるいらだちとか、父親の血筋とか、父に対して思う感じだとかも共感できます」

 菅田さんの才能に惹かれている青山監督は、2人で今後も一緒に映画を作っていきたいという。「ロカルノにまた戻って来たい」と、新たな抱負を語った。

海外メディア注目の「リアル」

 今回のロカルノ国際映画祭の国際コンペ部門には、黒沢清監督の「リアル~完全なる首長竜の日~」も出品されている。すでに日本では今年6月に公開済みだが、海外での発表はロカルノが初。そのため、記者会見には大勢の記者が集まり、海外での注目ぶりが目立った。

 ストーリーは、自殺未遂でこん睡状態が1年続く漫画家の淳美(綾瀬はるか)を目覚めさせようと、恋人で幼馴染の浩市(佐藤健)が「センシング」という技術を使って、淳美の意識の中に入り、自殺の理由を明らかにしようというもの。

 現実と、淳美の意識下という非現実の境界線のあいまいさを表現したこの作品に対し、海外メディアからはまず、タイトルに関する質問が集中した。黒沢監督は、「意表を突かれて面白かったのが、なぜ『リアル』というタイトルにしたのかとよく聞かれたことです」と打ち明ける。

 日本の日常会話で使われる「リアル」は軽く響くが、「ここでは、タイトルも『真実そのもの』など、もう少し深い『リアリズムのリアル』という風に考えてもらえる。つまり、作品の核心を突いているんです。このタイトルだったから、(日本よりも海外の方が)映画への理解が深い印象を受けました」と言う。

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 日本と海外との文化の違いは上映会でも感じられた。淳美が描く漫画に登場する死体を、浩市が現実のものとして目の当たりにするシリアスなシーン。日本では観客が息を飲むような場面だが、ロカルノではクスクスと会場から笑い声が聞かれた。これは、シリアスなシーンでの表現が陳腐だと思われたと考えることもできるが、黒沢監督は肯定的に捉える。

 「本当に怖いときって人は息を飲むだけなんですが、ちょっと怖いときや、ちょっとびっくりしたようなときに、海外の人はその後大抵ちょっと笑います。僕はそれを良い方に取っています。それはウケた、皆びっくりしたんだろうと」

 実際、海外メディアの反応は肯定的で、「作中では、現実と非現実、漫画、まぼろしなど、複雑な要素が絡み合っている。それを盛り立て、感動する映画になった」と絶賛するジャーナリストもいた。このコメントを聞いた黒沢監督は「外国人がこの映画を見るのは今回が初めて。今の言葉を聞いてほっとしている」と心境を語った。

1964年、北九州市に生まれる。

1995年、地元の門司を舞台にした「Helpless」で長編監督デビュー。

代表作に、第53回カンヌ国際映画祭で「国際批評家連盟賞」と「エキュメニック賞」を受賞した「EUREKA(ユリイカ)」(00)や「サッド ヴァケイション」(07)などがある。

2011年の第64回ロカルノ国際映画祭では、「東京公園」(11)が準グランプリに相当する審査員特別賞を受賞。

作家としても活躍しており、2001年の処女作「EUREKA」で第14回三島由紀夫賞を受賞。2005年には「ホテル・クロニクルズ」で第27回野間文芸新人賞候補にノミネートされた。

1955年、神戸市に生まれる。

1983年、「神田川淫乱戦争」で長編映画監督デビュー。

「回路」(01)や「アカルイミライ」(02)をカンヌ国際映画祭に出品、「回路」は国際批評家連盟賞を受賞。また、「トウキョウソナタ」(08)で同映画祭「ある視点」部門審査員賞を受賞している。

1993年、大阪に生まれる。

 2008年、第21回ジュノンスーパーボーイコンテストにファイナリストとして残ったことをきっかけに、デビュー。

 2009年、連続テレビドラマ「仮面ライダーW」で初主演を務める。

 主な主演映画には、「仮面ライダー」シリーズ、「王様とボク」(12)など。

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