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ローザンヌ国際バレエコンクール、人生最高の思い出の場に

「モンテカルロの同僚ダンサーは日本人で、わたしより足がずっと長い。体型でアジア人が引けを取ることはなくなった」とカンタルポ氏 Shunki Ogawa

若いダンサーの登竜門「第36回ローザンヌ国際バレエコンクール」が1月29日から始まった。今年は日本から17人も予選を通過し、ローザンヌに参加している。

「モナコ公国モンテカルロバレエ団」のエトワールで、4年前からローザンヌコンクールのコーチでもある、パオラ・カンタルポ氏に今回の制度の改革や参加者に贈る言葉などを聞いてみた。カンタルポ氏は1977年度の優勝者でもある。

swissinfo : 今年も75人の参加者のうち17人が日本人です。なぜここ数年ローザンヌコンクールには日本人を含めアジア人が増えているのだと思われますか? 

カンタルポ : 日本人に関しては、日本には良いダンススクールがあっても、バレエカンパニーが無い。従って、バレエでキャリアを積むには、日本を出る必要があり、このローザンヌコンクールはその第1歩を作ってくれる場だからです。

今はオペラ座などでオーディションもありますが、昔はローザンヌが唯一、世界に羽ばたく扉を開いてくれる場だったのです。才能があれば奨学金を得て世界的な学校に留学できるわけですから。

第2の理由は、日本人はとてもまじめで、練習量も多いし、ここに来てもコーチのいうことをきちんと聞く良い生徒たちだからだと思います。ただ、クラシックバレエは日本文化独自のものではないので、クラシックバレエの芸術的意味、ひいては曲目の文化的背景や意味などを理解するのにコンクール後も時間をかける必要があると感じます。

swissinfo : 表現の繊細さなど、日本人だからという特性がありますか?

カンタルポ : 表現というより、謙虚な態度と精神性の高さに特性を感じます。それはアジア人すべてに言えることかも知れません。

昨年コンテンポラリーのキリアンバリエーションの1つ、「ブラックバード ( Blackbird ) 」を多くのアジア人が選んで踊り、この精神的に深い曲を、わずか15歳の生徒たちが完全に理解して踊る姿には、深い感銘を受けました。

swissinfo : 今年は2つの年齢グループに分け、審査を継続的に続けて行き、最後の日まで選抜を行わないなど多くの改革がありますが、これをどう思われますか? 

カンタルポ : 実はわたしもこの改革を推進した委員会のメンバーです。今まであの子はいいねと選んだら、18歳だからスタイルが出来上がっていていいのだということがしばしばありました。

ここはあくまで、ぎくしゃくしているような、まだ出来上がっていない15歳の子が2~3年後どうなるかを想像し、良い学校で学べば伸びるという潜在的能力を見つけ出す場なのです。一般の人には理解できなくても、プロの審査員たちにはそれが見えるのです。今年は特に9人の非常に優れた審査員が見ています。

一般の人は出来上がったダンサーを選ぶ傾向にあるので、しばしば意見が異なるのはこのためですが。

いずれにせよ、これは本来のコンクールの意図に沿った改革で、参加者は満足してくれると思います。すでに昨年でさえ、ビデオの予選で選ばれて来ているので、優勝しなくてもここに参加するだけで満足している生徒を多く見かけ、好ましく感じました。今年はさらに最後まで選抜がないので、十分に学び、多くの良い体験をしてくれると思います。

swissinfo : では、このコンクールに参加するダンサーたちに贈りたい言葉は? 

カンタルポ : 自分と同じように優れているダンサーと経験を分かち合って欲しいということです。戦う相手としてではなく、同じものに情熱を傾ける同士としてお互い刺激し合うことです。

言葉が通じなくても、ダンスという共通の言葉がある。心を開いてほかのダンサーが同じ曲をどう解釈して踊るかを見て欲しいと思います。わたしでさえ若いダンサーを見て学ぶことは多いのです。新しい環境に素早く適応し、ここを学びの場、出会いの場として活用して欲しいと思います。

わたしの場合、ここで出会ったは仲間はみんな優れたダンサーになり、今でもお互い助け合っています。本当にここはいろいろな意味で、世界に向かって扉を開いてくれる場なのです。そうして人生で最高の思い出になるようにして欲しいです。

わたしも勝ちたいなどと思わず、世界中から集まるダンサーを観に来ました。30年前のことです。軽い気持ちで、先生とではなく父といっしょにやって来ました。そして、ここが人生で最高の思い出の場になったのです。

swissinfo、聞き手 里信邦子 ( さとのぶ くにこ ) ローザンヌにて 

ローザンヌ国際バレエコンクール

1973年ローザンヌで創設された「ローザンヌ国際バレエコンクール」は、15~18歳の若いダンサーを対象にした世界で唯一の国際コンクールである。その目的は、伸びる才能を見出し、その成長を助けることにある。「英国ロイヤル・バレエ・スクール」、「スクール・オブ・アメリカン・バレエ」など、世界40カ国以上の学校、バレエ団が協力している。

2月3日15時の決勝の切符は、電話+41 21 310 16 00 またはhttp://www.prixdelausanne.org で入手できる。

イタリア国籍

ミラノの「スカラ座ダンススクール」でバレエを学ぶ。

1977年、ローザンヌバレエコンクール優勝。
モーリス・ベジャールの「20世紀バレエ団」に引き抜かれ、次いでジョン・ノイマイヤー氏の「ハンブルグバレエ団」に所属。

その後、「ポルトガル国立バレエ団」の第1ダンサーを経て、現在「モナコ公国モンテカルロバレエ団」のエトワール。

4年前からローザンヌコンクールのコーチも務める。
レパートリーはコンテンポラリーからクラシックまで幅広い。

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