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円高、訪日人気、アラン・ドロン…スイスのメディアが報じた日本のニュース

映画「太陽がいっぱい」のワンシーン
KEYSTONE/Photopress-Archiv

スイスの主要報道機関が先週(8月19日〜25日)伝えた日本関連のニュースから、①日本株、円高局面の勝者と敗者は?②スイス人がこの夏、日本を目指したのはなぜ?③日本人女性の「神」だったアラン・ドロンさんの3件を要約して紹介します。

日本株、円高局面の勝者と敗者は?

東京株式市場は今月5日に大暴落した後、落ち着きを取り戻したようです。しかし、株高の要因の1つだった円安は、日銀の利上げや米国の利下げにより反転する兆しも。円高が進んだ場合に日本株はどうなるのか、ドイツ語圏の日刊紙NZZのマルティン・ケリング記者がポイントを解説しました。

一般論として、輸出企業の多い日本にとって円安は追い風です。円高に転じれば、輸出比率が高い企業や大規模な海外事業を行っている企業の株は売られる傾向があり、記事は「自動車業界がすでにその例を示している」としています。

一方、スイスの銀行UBSは楽観的です。「株価の回復により、一部のセクターや銘柄に投資機会を提供している」。円高でも株価が安定していれば、電子部品や半導体メーカーなど輸出産業は買いだという見方です。

円高の「勝者」となるのは「国内市場に焦点を当てる企業の大半」だといいます。UBSは「厳選されたハイテク企業のほか、日本の金利上昇からも恩恵を受ける可能性のある国内市場志向の企業」がこれに該当するとして、不動産株や銀行株を推奨しています。

NZZは日本のコーポレートガバナンス(企業統治)改革も、円高下でも株価を下支えする要因になるとみています。セブン&アイ・ホールディングスがカナダのアリマンタシォン・クシュタールによる買収提案に反対しなかったことを事例に、「投資家の意見に耳を傾ける経営者が増えている」と分析。「たとえ円高であっても、日本市場が以前よりも高いバリュエーション(投資尺度)を正当化できる可能性がある」と結論づけました。(出典:NZZ外部リンク/ドイツ語)

スイス人がこの夏、日本を目指したのはなぜ?

フランス語圏の大衆紙ル・マタン日曜版が18日、スイス人が民泊仲介のAirbnbで予約したこの夏の行き先のトップは東京で、4位が大阪だったと報じ、話題外部リンクを呼びました。地域紙トリビューン・ド・ジュネーブは日本の人気が急上昇した理由を深掘りしました。

ジュネーブ大学で日本文化史を教えるクレア・アキコ・ブリセ教授は、円安は大きな理由ですが、それだけで全てが説明できるわけではないとみています。ジュネーブ郊外の町カルージュやローザンヌをはじめ各地で日本関連イベントが開催され、日本文化がスイスで広く知られるようになりました。

またブリセ氏は「スイスでは近年、寿司やラーメン店の数がかなり増えている」と話します。治安の良さもポイントが高く、「地震だけが心配の種だが、予測不可能でまれなことだ」と指摘しました。

ヌーシャテル出身のロリ・ドロエルさん(30)はこの夏、日本を3週間旅しました。「ドラゴンボールZ」などの漫画やアニメを見て育ったドロエルさんは、「旅館で歴史的な日本を、京都や東京で現代的な日本を発見したかった」そうです。

ドロエルさんはソーシャルメディアの功績も指摘します。「YouTubeやInstagramで、日本に関する美しいコンテンツを目にすることが多くなった。寿司や桜、Netflixの流行りのアニメなど、人々は日本について空想的なビジョンを持っている」

スイスの旅行会社クオーニ(Kuoni)やロータス・ボヤージュ(Lotus Voyages)でも日本旅行の問い合わせが激増しているそうですが、「日本が『マス市場』になったわけではない」と口を揃えます。富裕層向け旅行を企画するロータスでは、バリ島が人気のインドネシアに次いで、日本は2位だそうです。(出典:トリビューン・ド・ジュネーブ外部リンク/フランス語)

日本人女性の「神」だったアラン・ドロンさん

フランス人俳優のアラン・ドロンさんが18日、88歳で死去しました。フランス語圏のル・マタンでは、ドロンさんが日本で特に「その完璧な肉体に熱狂的に惚れ込んだ50歳以上女性の記憶に残っている」と伝えました。

人気に火がついたのはドロンさんが魅惑的な殺人者を演じた映画「太陽がいっぱい」。公開の3年後にドロンさんは初訪日し、その後も繰り返し日本を訪れました。

1986年、ドロンさんの日本ツアーを同行取材した仏誌フィガロによると、彼が行く先で「何百人もの若者が障害物を乗り越えようとした」と言います。赤いバラや果物かごなどを贈ろうとする人々はまるで「せん妄」状態に。「テレビ出演すれば自動的に視聴者が増えた」。ドロンさん自身も、日本では「一種の神のようなもの」と自認していました。

記事は「多くの日本人女性にとって、アラン・ドロンは男性の理想を体現していた」と伝えています。ただ「時間の経過によりスターのイメージは少し薄れてきているようだ」とも言い、東京の街中でドロンさんについて語れるのは50歳以上の女性だけだったと結びました。(ル・マタン外部リンク/フランス語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「マッターホルンで登山者の滑落死相次ぐ」(記事/日本語)でした。他に「スイス観光地ブリエンツの土砂災害 予想より被害深刻で鉄道路線に影響」(記事/日本語)、「コソボ人暴行犯、国外追放」(記事/英語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は9月2日(月)に掲載予定です。

校閲:大野瑠衣子

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