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スーダン停戦協議、和平プロセス参加求めスーダン女性らジュネーブへ

ジュネーブで始まった停戦協議で、声を上げるデモ隊のメンバー
ジュネーブで始まった停戦協議で、声を上げるデモ隊のメンバー Afp Or Licensors

戦闘が続くスーダン内戦の停戦を目指す協議がスイスで行われている。15人のスーダン人女性が和平プロセス参加を求めてスイスに来た。

1年半近く続く内戦が、アフリカで3番目に大きな国スーダンに世界最悪の人道危機を引き起こしている。

スーダンに関する停戦協議が14日、スイス・ジュネーブで始まった。より多くの人道支援の受け入れ、可能であれば停戦交渉まで漕ぎ着けたい考えだ。

仲介役の米国は、スーダン国軍(SAF)と準軍事組織「即応支援部隊(RSF)」の代表をジュネーブの非公開の場所に招待した。しかし現時点で姿を現したのはRSFの代表団だけだ。

和平会議は初めてではない。昨年、米国主導によるサウジアラビア・ジッダでの協議は、成果が結実しなかった。

ジュネーブを訪れたスーダンの平和・ジェンダー活動家のラバブ・バルド氏は「今回はきちんとやらなければならない」と話す。「そして国連が規定するように、女性もこのプロセスに参加しなければならない」

国連安全保障理事会決議1325は、和平交渉、紛争解決、復興における女性の平等な参加を求めている。

ラバブ・バルド氏。ジェンダー・平和活動家。国連開発計画(UNDP)やシンクタンク「Inclusive Peace」などでシニア・ジェンダー&インクルーシブ・アドバイザーや国際コンサルタントを務める。また、UN Women(国連女性機関)と開発に関する政府間当局事務局(IGAD)でスーダンと南スーダンの特別代表を務めた
ラバブ・バルド氏。ジェンダー・平和活動家。国連開発計画(UNDP)やシンクタンク「Inclusive Peace」などでシニア・ジェンダー&インクルーシブ・アドバイザーや国際コンサルタントを務める。また、UN Women(国連女性機関)と開発に関する政府間当局事務局(IGAD)でスーダンと南スーダンの特別代表を務めた zVg

スーダンの女性は特に危険

バルド氏は、世代の異なる15人のスーダン人活動家とともにスイスを訪れた。その多くは、戦争が始まって以来、病人や子供たちの世話、薬や食料の調達に尽力し続けてきた人たちだ。

「レイプ、虐殺、飢饉、私たちはあらゆることを経験した」とバルド氏は言う。「私たちは自国にとって停戦がどんな価値を持つか知っている。だからこそ、私たちは交渉に参加しなければならない」

国連決議1325の実施に関する国際研究によれば、和平プロセスに女性が参加すると、協定の15年間継続率が35%高まる。

スイスのNGO 「ピースウーマン・国境を越え平和をつくる女たち」のデボラ・シブラー事務局長は「女性やその他の市民社会のアクターの参加によって、戦争は戦争当事者の間だけで起こるものではないことが明確化される。女性が受けた暴力の経験は、常に対話の一部でなければならない」

このためバルド氏らは最近、この点を考慮した和平合意書を作成した。

内戦終結に必要な措置を列挙し、紛争当事者双方の義務も盛り込んだ。

また、女性への広範な性的暴力や、武装勢力による病院の占拠にも言及している。

国連人道問題調整事務所(OCHA)は、スーダンでジェンダーに基づく暴力の被害を受けた女性・女児は700万人近くに上ると話す。

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どうすれば紛争当事者に影響を与えることができるか

目標は、これらの措置が合意に組み込まれることだ。バルド氏らは、そのために近日中にジュネーブで総力を結集するつもりだ。

「両当事者とは個別に協議を行い、共通のゴールとレッドライン(超えてはならない一線)を確認する」

しかし容易ではない。「停戦協議は男性の領域であり、非公開で行われる」と国連開発計画(UNDP)などで国際コンサルタントとして働くバルド氏は話す。

このため継続的なネットワークづくりとロビー活動が必要だという。「和平プロセスと国の安全にとって女性が不可欠であることを当事者が認識すれば、私たちに大きなチャンスがある」

それは経験則にも沿っている。1990年代初め、バルド氏はスーダン東部紛争の和平プロセスに参加し、包括的和平合意に女性の声を反映させるなど重要な役割を果たした。

スーダンは、数十年にわたり武力紛争や内戦に悩まされてきた。 2011年、南スーダンが住民投票により分離独立した。

スイスでは過去に停戦協議が行われている。2002年、ビュルゲンシュトックでヌバ山地の停戦が調印された。

当時と同様、今回の協議も米国政府の主導で行われている。スイスはサウジアラビアと共催という形式だ。

協議には国連、アフリカ連合、エジプト、アラブ首長国連邦もオブザーバーとして参加する。会議は8月24日まで続く予定。

ビュルゲンシュトックでのウクライナ会議から2カ月後、スイスが再び重要な国際交渉を主催することになった。

2019年4月、オマル・アル・バシール政権崩壊を祝う女性たち。だが国には安息は訪れない
2019年4月、オマル・アル・バシール政権崩壊を祝う女性たち。だが国には安息は訪れない Afp Or Licensors

ジュネーブのチームは、予定していた活動をまだ開始できていない。現時点ではRSFの代表者だけがジュネーブを訪れている。バルド氏らは、どちらか一方だけの味方であるという印象を与えないよう、国軍が姿を現すまで待ちたいと考えている。数日以内にそうなることを期待している。

それまでは米国の特使と緊密に連絡を取り合い、技術的な支援を提供している。スイスはホスト国として表舞台には出てこない。

「私たちはスイス側との対話を行い、スイスが交渉への女性参加を支援してくれることを望んでいる」とバルド氏は言う。同氏らの査証(ビザ)は迅速に発給されたという。

ポジティブな兆候

ジュネーブ在住で、スーダン関連で30年以上働くロマン・デッケルト氏は、これをポジティブな兆候だと見る。「スイスが彼女たちの関与を望んでいることを示すものだ」。スイスがホスト国を務めることは、交渉にとっても有益だと話す。

「代理戦争でもあるこの戦争において、スイスは少なくとも比較的中立的な国だ」。今回は米国が仲介役を務めるが、スイスが今後積極的に外交関与する可能性も同氏は否定しない。

デッケルト氏の停戦合意への期待は薄い。バルド氏は、人道援助物資をスーダンに届けるための「人道的回廊」構築を最優先に据える。スーダン国内では、人口のほぼ半数に当たる2500万人が戦争のために飢餓に陥り、10万人が国外避難を余儀なくされている。

バルド氏は、ジュネーブでの話し合いは、何年もかかるであろう複雑なプロセスの始まりだと考えている。とはいえ、こう強調する。「変化をもたらすために私たちはジュネーブに来た。私たちの考える重要事項を交渉の場に置くまで帰国しない」

編集:Giannis Mavris、独語からの翻訳:宇田薫、校正:上原亜紀子

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