中央銀行議長、スイス企業に対ユーロ防衛策を提言
ジャン=ピエール・ロート・スイス国立銀行(SNB)議長は17日チューリッヒで行われたシンポジウムで講演し、スイス企業に来年1月のユーロ流通開始による通貨の新展開に備えて自己防衛策を取るよう呼び掛けた。
ロート議長は、スイス内外でのユーロ取引の増加はスイスフランの安定性を試すことになるだろうという。「スイスフランはユーロとの交換レートのリスクに曝されることになる。スイスフランとユーロの為替相場が今まで安定していたからという理由で、これからも安定し続ける結論付けてはいけない。」というロート議長は、スイスがEUに加盟しない限りユーロ/スイスフランのレートは外為市場が決定することになると述べた。また、観光業界に対してロート議長は、「スイスに隣接する全ての国でユーロが使われているのに、スイスだけユーロが使えないという現実を旅行者は納得しないだろう。」と、国境地域を中心にユーロ建て取引の準備を急ぐように助言した。
ロート議長の見解に対し、カントレード・プライベートバンクの首席エコノミスト、マルクス・アレンスパー氏は、ユーロ流通開始当初はスイス企業に対する圧力はあるものの、長期的には統一通貨から受ける利益は大きいと見る。多くの企業は、二重通貨モデルに適応するための必要な内部変革をすでに行っている。「多くの企業の最大輸出先はユーロ圏だ。だから、スイス企業はすでにユーロ建てに替えているところが多い。スイス経済は徐々に非公式二重通貨制度を採用していくことになるだろう。」と、アレンスパー氏はいう。
また、金融政策に言及したロート国立銀行議長は、SNBの金融政策は物価安定を目指すものでスイスフラン/ユーロの固定為替相場を目指すものではないと述べた。さらに、スイスはユーロ圏とは独自の金融政策を設定し、SNBは自主的な金融政策を続けるとした。そして、スイスの低金利(ユーロ圏よりも約1.5%低い)を指摘し、スイスの長期的な経済安定のための明白な利点だと語った。
が、いくつかの懸念を示しながらも、ロート議長はユーロ流通開始を歓迎すると述べた。そして、マーストリヒト条約が想定したように、ユーロが長期的な通貨安定をもたらすならば、スイスは過去最高の金融環境を見い出すだろうと語った。
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