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ゼレンスキー大統領、スイス議会でビデオ演説

スイス議会でのゼレンスキー大統領のビデオ演説
© Keystone / Peter Klaunzer

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は15日、スイス連邦議会でビデオ演説を行った。スイスからの支援に感謝の意を述べるとともに、武器調達の重要性を強調した。

ゼレンスキー氏の演説に先立ち、国民議会(下院)のマルティン・カンディナス議長が歓迎の言葉を述べ、ロシアによる侵略戦争がウクライナにもたらした苦しみへの失望を表明した。

スイス議会は、この国際法違反の戦争を可能な限り強い言葉で非難した。「今日のゼレンスキー大統領の演説で、私たちはウクライナ国民との連帯の合図を送る」

ゼレンスキー氏は演説の冒頭で「親愛なるスイスの皆さん、困難に直面しても無関心を決め込まずにいてくれてありがとう!」と述べた。あらゆる制裁措置、あらゆる資産凍結、あらゆる兵器は、ウクライナをテロから解放するのに役立つ、と続けた。

武器再輸出の意義

ゼレンスキー氏はスイスで武器の再輸出をめぐる議論が起きているのを認識している、と語った。「私はあなた方に1つの事実を頭にとどめておくように呼びかけたい。私たちが武器の供給を求めているのは、ウクライナの土壌を再び平和の領土にするためだ」

ウクライナは侵略の源泉ではなく、紛争地帯でもない、と強調し、ロシアの侵略に対抗するには協働するしかないと訴えた。食料確保やロシアに強制送還されたウクライナの子供の奪還など、各パートナー国がそれぞれの強みに応じてウクライナを支援できるという持論を繰り返した。

「ありがとう、スイス!」

ゼレンスキー氏はスイスの得意分野を最大限に活用できる方法として、世界平和サミットの開催を提案した。「どうもありがとう、親愛なるスイスの皆さん!ウクライナに栄光を」と演説を締めくくった。

ゼレンスキー氏は胸に「ウクライナ」と書かれた黒いTシャツで登壇した。演説の間、連邦議会は沈黙に包まれていたが、演説後には長いスタンディングオベーションでゼレンスキー氏の言葉に感謝を示した。

国民党は不在

ゼレンスキー氏のビデオ演説は午後1時、連邦議会の昼休み中に行われ、正式な審議の一部ではなかった。保守派で議会第1党のスイス国民党(SVP/UDC)の議員の大半は議場に現れず演説を「ボイコット」した。同会派のトーマス・エスキ代表は、ゼレンスキー氏の演説によりスイスはウクライナ寄りになりすぎて、中立性を危険にさらしていると述べた。

空席の議席
国民党は演説を「ボイコット」した © Keystone / Peter Klaunzer

全州議会(上院)のブリギッテ・ヘーバーリ・コラー議長はゼレンスキー氏の演説後、スイスの立場について「中立国にも民主主義や法の支配、人権などの基本的価値のために立ち上がる権利と義務がある」と述べた。スイスは国際法を守り推進する立場にあり、ウクライナの主権と領土保全を支持すると語った。

ゼレンスキー大統領がスイスでビデオ演説するのは、スイスで2022年3月に行われた反戦デモ2022年5月の世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に続き3回目。連邦議会では初めて。

独語からの翻訳・追記:ムートゥ朋子

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