スイスの視点を10言語で

スイスの仮想通貨企業、スウェーデンに採掘場を新設

アルパイン・マイニング社のデータセンター
アルパイン・マイニング社はスイス・ゴンド村に仮想通貨の採掘場を作り、一躍有名になった swissinfo.ch

スイスのベンチャー企業アルパイン・マイニングAlpine Mining外部リンク社がスウェーデンに仮想通貨の大採掘(マイニング)場を設立する。香港のブロックチェーン企業ディジネックスDiginex外部リンクと提携する。

 ディジネックスは、スイスを含む欧州の他の地域も視野に入れている。仮想通貨の採掘のため、電力100メガワットで操業できる場所を探している。

 莫大な電力を消費する仮想通貨の採掘業者にとって、スイスとスウェーデンは共に競争力のある長所を持っている。豊富な水力発電、熱くなったコンピューターを冷やす寒冷な気候、安定した政治と仮想通貨ビジネスに好意的な政策だ。

 しかし2年前、スウェーデンが大型データセンターの電力消費に対する税率を引き下げ、欧州で一歩抜きん出ることになった。同国には既に多数のビットコインやその他仮想通貨の採掘企業が集まる。フェイスブックのデータセンターもスウェーデンにある。

 ディジネックスの広報は、「スイスが同様の政策を採れば、スウェーデンと同等の立場に上がるだろう」と話す。「スイスは間違いなく、採掘場として他の条件は全て満たしている」

 「あらゆる種類のデータセンターのハブとなることは、大学や研究機関を呼び込む確かな原動力になる」

莫大な電力消費

 ビットコインやイーサリアムなど多種多様な仮想通貨を採掘するには、複雑な数学的パズルを解くため互いに競合する特殊なコンピューターが必要になる。採掘競争の勝者には仮想通貨の獲得という報酬が与えられる。

 採掘場の運営には莫大な電力がかかると批判されている。クリーンエネルギーを使ったりアルプス地域の自然な冷却効果を利用したりすることで、環境への悪影響を和らげることができる。

 今のところ、スイスの採掘場は比較的小規模だ。電力コストが外国に比べて割高であるため、いくつかの採掘場は閉鎖された。

おすすめの記事
ゴンド村はかつて金鉱採掘で栄えた

おすすめの記事

なぜ人気?スイスの小さな村が仮想通貨の採掘場に選ばれる理由

このコンテンツが公開されたのは、 長年不遇をかこってきたスイスの小さな山村に、新種の鉱山が希望をもたらしつつある。人口40人のゴンド村では、もはや金は採掘されていない。今採掘されているのは仮想通貨だ。なぜこの小さな村が仮想通貨の採掘場として人気なのか。

もっと読む なぜ人気?スイスの小さな村が仮想通貨の採掘場に選ばれる理由

 アルパイン社はイタリアとの国境に近いヴァレー州ゴンド村に水力発電を利用した採掘場を建設し、一躍有名になった。施設には仮想通貨を発掘するコンピューターがずらりと並ぶ。

 同社は近く、スウェーデン北部に8メガワットの水力発電を利用した採掘場の建設を支援する。ゴンドの約30倍に相当する規模だ。具体的な設置場所は明かされていない。

スイスの拠点は維持

 共同創立者のルドヴィック・トマス氏によると、アルパイン社がゴンド村で成功を収めたことが、ディジネックスとの提携への契機になった。アルパイン社はゴンド採掘場を手作業で建設。冷却システムを自ら設計し、設備を保護するためのプラスチック製クリップを、3Dプリンターを使ってその場で作り上げた。

 そのことは、ディジネックスの欧州本部長にヴァレー州出身のスイス人を当てることにも繋がった。同社は香港の投資会社マディソン・ホールディング・グループの出資を受けている。ワイン卸商から発祥した同グループは先月、ブロックチェーン企業を買収。スウェーデンの採掘場の資金として、3千万ドル(約33億円)を拠出する。

 ディジネックスの広報は、「スキルが高く、我々が採掘場を設置したい場所について来てくれる人材を見つけるのは容易ではない」と話す。「アルパイン社との提携が、業務拡大への最初の一歩になると期待する」

 アルパイン社にとって、スウェーデンへの進出はスイスとの決別を意味するわけではない。トマス氏は「スイスでは引き続きゴンド村に拠点を置き、スイスでの採掘能力を大幅に拡大する予定だ」とスイスインフォの取材に語った。

仮想通貨の採掘の図解
swissinfo.ch

(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)

人気の記事

世界の読者と意見交換

ニュース

給油中の車

おすすめの記事

スイス、EV・ハイブリッド車が好調

このコンテンツが公開されたのは、 スイス自動車輸入組合オート・スイスの最新データによると、今年上半期のスイスの新車登録台数の58%はハイブリッド車と電気自動車(EV)だった。

もっと読む スイス、EV・ハイブリッド車が好調
ベルンのハイキングコース

おすすめの記事

大雨被害で多くの登山・ハイキングコースが閉鎖 スイス

このコンテンツが公開されたのは、 大雨による洪水や地滑りが発生したスイスでは、依然として約620カ所の登山・ハイキングコースが閉鎖されている。特に南部のヴァレー(ヴァリス)州で大きな被害が出ているという。

もっと読む 大雨被害で多くの登山・ハイキングコースが閉鎖 スイス
スウォッチのロゴ

おすすめの記事

スウォッチ1~6月期売上高14.3%減 中国の需要低迷が重荷に

このコンテンツが公開されたのは、 スウォッチが15日発表した1~6月の純売上高は34億5000万フラン(約6070億円)と、前年同期比で14.3%減った。中国の高級品需要の落ち込みが、スイス時計業界全体の重荷になっている。

もっと読む スウォッチ1~6月期売上高14.3%減 中国の需要低迷が重荷に
マイクに向かって演説をする女性

おすすめの記事

トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」

このコンテンツが公開されたのは、 ドナルド・トランプ前大統領が13日に銃撃された事件を受け、スイスのヴィオラ・アムヘルト大統領は「政治的な暴力は容認できない」と訴え、一日も早い回復を祈った。

もっと読む トランプ氏銃撃、スイス大統領「容認できない」
洪水の被害を受けた地域

おすすめの記事

ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で

このコンテンツが公開されたのは、 スイス南部を中心に発生した大規模な洪水の影響を受け、ツェルマット~ディセンティス間を結ぶマッターホルン・ゴッタルド鉄道(MGB)は、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休するとの見通しを明らかにした。

もっと読む ツェルマット行き鉄道、少なくとも8月中旬まで一部区間で運休 大洪水で
スイスは対ロシア制裁リストを拡大した

おすすめの記事

スイスが対ロシア制裁リストを拡大

このコンテンツが公開されたのは、 スイスは対ロシア制裁リストを拡大した。ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が続いていることを受け、欧州連合(EU)が決定した変更を採用した。

もっと読む スイスが対ロシア制裁リストを拡大
人工知能(AI)による雇用喪失への懸念はスイスが最も低かった

おすすめの記事

AIによる失業懸念、スイスは最低

このコンテンツが公開されたのは、 人工知能(AI)は日々の仕事に影響を与えている。スイスでは、多くの人たちが仕事を含めAIを使っているが、この新しいテクノロジーのせいで仕事を失うと心配している人は比較的少ないことが最新の調査で分かった。

もっと読む AIによる失業懸念、スイスは最低
核兵器禁止を訴える団体

おすすめの記事

核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの市民団体「核兵器禁止を求める同盟」は、国連核兵器禁止条約への加盟を求めるイニシアチブ(国民発議)を立ち上げた。必要な署名が集まれば国民投票が実施される。

もっと読む 核兵器禁止条約への加盟求めスイスで署名集め開始

swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。

他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部

SWI swissinfo.ch スイス公共放送協会の国際部