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緑の党の失速際立つ 2023年総選挙第2回世論調査

地球温暖化をめぐる学生運動が生んだ熱気は一服し、スイスの緑の党は失速している Keystone / Christian Merz

今年10月のスイス総選挙では、前回2019年に大躍進した環境政党が勢いを失いそうだ。気候変動は有権者の最も重視する争点だが、政党支持が分散している。

10月22日に予定される4年に1度の総選挙では、現時点で明確な勝者として浮上している政党はない。一方、配色が濃いのは緑の党(GPS/Les Verts)だ。世論調査機関ソトモによると、緑の党の予想得票率は10.7%と、2019年に獲得した議席占有率から2.5ポイント減る見通しだ。ただ2015年時点の7.1%はなお上回る。

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中道寄りの自由緑の党(GLP/PVL)も支持が薄れつつあり、環境政党の議席喪失は穴埋めできそうにない。

ソトモのミヒャエル・ヘルマン代表は「緑の党の衰退は、気候関連の政治運動が一定数減ったことにより説明できる。4年前、学生主導の気候ストライキによって生まれた熱気が今は冷めてしまった」と解説する。

気候変動への関心は後退したとはいえ、依然としてスイス有権者にとって最大の懸念事項だ。ソトモの世論調査では、スイスが直面する最大の課題として有権者の42%が「気候変動」を挙げた。

左派の社会民主党(SP/PS)も、気候変動問題で存在感を発揮している。ヘルマン氏は「社会民主党は、2019年に緑の党に乗り換えた支持者を一部奪還した」とみる。近年は支持者が減少傾向にあったが、反転の兆しがある。調査では社会民主党の予想得票率は前回実績より1ポイント多い17.8%となった。下院第2党の座を守る公算が大きい。

移民問題も重視

右派の国民党(SVP/CDU)の予想得票率も1ポイント増え、第1党の座を固めた。同党の重要政策である移民問題は今年、スイスの有権者にとって2番目の懸念事項に浮上している。

「選挙バロメーター」はスイス公共放送協会(SRG SSR)の委託を受けソトモ(本社・チューリヒ)が実施。2023年総選挙に向けた世論調査の第2回目に当たる。

調査は2月20日~3月5日に実施。有効回答者数は2万7058人。標準誤差は±1.2%。

スイスへの難民申請件数は急増中だ。さらに、パンデミック後の経済回復を受けて欧州連合(EU)諸国から何万人もの労働者が職を求めてスイスに移住した。

だがこれにより2015年のような国民党圧勝が再現される見込みは低い。「当時は大量移民反対イニシアチブやシリア難民危機、シャルリー・エブド襲撃事件といった移民問題が他の話題を覆い隠した。現状はそれには程遠い」(ヘルマン氏)

スイスが深刻な労働力不足に陥っている現状も、反移民感情の後退の一因となっている可能性がある。世論調査では、「失業、賃金」を最大の懸念事項に挙げる人は4%しかいなかった。国民党の掲げるもう1つの重要テーマ「ウォーキズム(啓発主義)との戦い」も、重視する人は11%にとどまった。

揺るがぬ安定

こうした小さな変化はみられるものの、総選挙で大勝する政党はなさそうだ。議席配分がわずかに右寄りにシフトしても、スイス政治の誇る安定は揺るがない。

世論調査は、国内第2の銀行クレディ・スイス(CS)がライバル行UBSに買収されることが決まる前に実施された。政府主導の救済劇は政界で多くの議論を呼んでいるが、スイスの有権者にとって大きな争点になる可能性は低い。ソトモの政治学者サラ・ビュティコファー氏は 「政治的バランスを変えるほどの感情が膨らむ可能性はない」とみる。

ただCS問題は左派政党の追い風になるとみられている。ヘルマン氏は「社会民主党はこの状況を利用して、右派政党と緑の党を踏み台にして立ち位置を固めるかもしれない」と分析する。

在外スイス人の関心事は

在外スイス人の注目する争点は少し異なる。国内の有権者に比べ、社会保障や独立、主権といった問題をより重視。重要度は気候変動に匹敵する。

反対に、年金改革については関心が高くない。

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英語からの翻訳:ムートゥ朋子

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