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映画

ロカルノ国際映画祭
ロカルノ国際映画祭の野外スクリーン Keystone

スイスの映画、各種映画祭、スイスの監督、俳優、過去の受賞作品、そして世界的に有名な映画の舞台となったスイスの撮影スポットの数々を紹介する。

スイスの映画館

 スイスに270ある映画館はそれぞれ充実しており、映画ファンの期待が裏切られることはない。

 他の国と同様、スイスのたいていの映画館では世間一般で関心が高いと思われる作品を上映するため、結果的にハリウッドのヒット作が前面に押し出される形となっている。このことは、スイス映画館配給会社協会(ProCinema)(独/仏/伊語)外部リンクが公表している1995年以降のスイスにおける観客動員数ランキング外部リンクを見ても明らかだ。しかし、都市部に限られるものの、ミニシアター系の映画も非常に豊富に上映されている。チケット販売数のおよそ5%はスイス映画が占めている。

 何の映画が、どの映画館で、いつ上映されているかを調べるためには、スイス最大の映画情報サイト「シネマン(英/独/仏語)外部リンク」を見よう。新聞にも特定の日に上映映画一覧が掲載される。スイス映画の情報は財団スイス・フィルムズ(英/独/仏語)のホームページ外部リンクで。

 スイスの映画館の多くは快適で技術的にも設備が整っているが、高くつくこともある。チケットの平均的な価格は大人16フラン(約1810円)ほどだが、都市部では19フラン程度になることもある(3D映画はチケット代に2フランが加算され、3Dメガネに別途3フランかかる)。

 とは言うものの、学生、年金受給者、家族などに対するさまざまな割引がある。また、毎週月曜日は、誰でも買うことのできるお得なチケットを提供する映画館が多い。スイスの大手映画チェーンのキニー(独/仏語)外部リンクキターク(英/独/仏語)外部リンクには、映画10本を割引価格で見ることのできるカードがある。ほとんどの映画館でオンライン予約が可能だ。

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スイス人はどんな映画がお好き?

このコンテンツが公開されたのは、 スイスの2014、15年における映画館の入場者数は延べ2千730万人。その64%はアメリカで製作された映画を鑑賞している。今日、スイスではどのような映画が人気なのか?上映される映画の本数は?好まれる映画のジャンルは?スイスインフォがグラフィックでスイスの映画事情を概観した。

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言語・年齢などスイス特有の問題

 スイスの映画館特有の側面の一つに、外国映画をどのように扱うかという問題がある。ごく最近まで、近隣諸国とは異なり、スイスでは字幕映画が好まれてきた。転換点となったのは、吹き替え映画のチケット販売数が字幕映画を上回った2007年だ。それ以来、吹き替えがますます好まれる傾向にある。スイスの映画配給会社は、ドイツ、フランス、イタリアに既存の吹き替え版を使うだけでよいので、吹き替え映画は比較的安くあがる。

 それでもなお、少なくとも都市部では、有名な作品はたいていの場合、字幕版で観ることができる(スクリーン下部に2つの言語で字幕が表示されることが多い)。また、アートシアター系の映画はほとんどの場合字幕版で上映される。

 また、映画の中盤で10分間の休憩が入る。休憩が入るのはたいがいアクション満載のシーンや感動的な場面の真っただ中のことが多く、イライラする観客も多い。

 さらに、映画館で鑑賞する際に設けられている年齢制限の問題がある。2013年まで、その分類は26あるカントンに委ねられていたため、制限が分かりにくかった。「英国王のスピーチ(原題・The King’s Speech)」(2010年制作)を例にとると、ジュネーブでは7歳以上が観ることができたが、バーゼルでは9歳以上、ベルンでは10歳以上で、どちらの街でも大人同伴でない場合には12歳以上でなければならなかった。チューリヒでは12歳未満の子どもは映画館に入ることができなかった。

 その後、例外はあるものの、年齢制限の分類は統一されてきている。すべての映画に、法定年齢と推奨年齢という2つの異なる年齢制限が設けられる。たとえば、ナチス政権下の1936年に開催されたベルリンオリンピックで活躍したアメリカ人陸上選手ジェシー・オーエンスの半生を描いた伝記ドラマ「栄光のランナー/1936ベルリン(原題・Race)」(2016年)は「8/12」に分類されている。これは、8歳以上はこの映画を観ることが許可されているが、この映画が扱うテーマは概して12歳未満の子どもが気に入る内容ではないだろう、という意味だ。

スイスで開催される映画祭

 スイスでは一年を通して、トップクラスの質を誇るさまざまな映画祭(英/独/仏/伊語)外部リンクが開催される。

 国際的にも有名な映画祭は、世界中から集められた珠玉の小品を発見するのに最適なロカルノ国際映画祭(英/伊語)外部リンク、スターが勢ぞろいするチューリヒ映画祭(英/独/仏語)外部リンク、ジュネーブの国際人権映画祭(英/仏語)外部リンク、国際アニメーション映画祭「ファントシュ(英/独/仏語)外部リンク」、フリブール国際映画祭(英/独/仏語)外部リンクヌーシャテル国際ファンタスティック映画祭(英/独/仏語)外部リンク。ニヨンの「ヴィジョン・デュ・レール(英/独/仏語)外部リンク」はドキュメンタリー映画祭として世界に名高い。

 LGBT映画が好きな人にも、ベルンの「クィアズィヒト(独/仏語)外部リンク」や、ジュネーブの「エヴリバディズ・パーフェクト外部リンク」、チューリヒの「ピンク・アップル(英/独語)外部リンク」、ルツェルンの「ピンク・パノラマ(独語)外部リンク」など映画祭の選択肢は豊富だ。

 スイスの最も知名度の高い映画祭の一つに国際短編映画祭「シュニット(英語)外部リンク」があげられる。2003年にベルンで生まれた同映画祭は、今では世界中に広まっている。

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 シュニット国際短編映画際会場の一つ、ベルン聖霊教会

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スイスで生まれた短編映画祭「シュニット」、世界規模に発展

このコンテンツが公開されたのは、 13年前にスイスの首都ベルンで生まれた短編映画祭が、今では世界規模で開催される大きなイベントに発展している。世界8都市で同時に開催される「シュニット国際短編映画祭」の目標は、ショートフィルムを世界中の観客に楽しんでもらうことだ。  「あと30秒、この映画を見ますか?」。ベルンのシュニット国際短編映画際のオープニング・ナイトで、レフェリーの格好をした男性がマイク越しに、会場いっぱいの観客に叫ぶ。続いてブーイングと歓声。「フィフティー・フィフティーのようです。では続けましょう!」。男性はそう言いながら、マイクを高々と宙に上げた。一人のダンサーがステージに歩き出ると同時に映画が再開され、スピーカーからは音楽が流れ出た。

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 絶景のロケーションで、星空の下、映画を観るのは最高だ。スイスでは、多くの野外映画館が開催される。しかし、映画のチケットを買う前に言語を確認しよう。野外で上映される映画(特にアニメーション)は吹替版のことが多い。

スイス人監督・俳優

 スイス人以外の外国人がたいてい名前をあげることのできるスイス人監督は、おそらくフランス系のジャン・リュック・ゴダールだけだろう(「勝手にしやがれ(原題・À bout de souffle」」(1960年)、「軽蔑(原題・Le mépris)」(1963年))。もしかすると、ドイツ系スイス人のマーク・フォースターの名もあがるかもしれない(「ネバーランド(原題・Finding Neverland)」(2004年)、「007/慰めの報酬(原題・Quantum of Solace)」(2008年)。

 しかし、スイスは、クリエイティブで興行的にも成功を収める数多くの監督を輩出してきている。たとえば、ドキュメンタリー映画「Iraqi Odyssey(仮訳・イラク版オデュッセイア)」(2014年)のサミール監督、「Home(仮訳・ホーム)」(2008年)や「シモンの空/姉の秘密(原題・L’enfant d’en haut)」(2012年)のウルスラ・メイヤー監督、「Sennentuntschi(ゼンネントゥンチ)」(2010年)のミヒャエル・シュタイナー監督、「ハイジ/アルプスの物語(原題・Heidi)」(2015年)のアラン・グスポーナー監督がいる。他のスイス人監督に関する情報は財団スイス・フィルムズのホームページ(英/独/仏語)外部リンクで。

 また、スイスには優れたドキュメンタリー映画監督を世に送り出すのに適した土壌がある。たとえば、「The Giant Buddhas(仮訳・バーミヤンの大石仏)」(2005年)、「Space Tourists(仮訳・宇宙旅行者)」(2009年)のクリスティアン・フライ監督、「みつばちの大地(原題・More Than Honey)」(2012年)のマルクス・インホフ監督、「Virgin Tales(仮訳・処女の物語)」(2012年)のミリアム・フォン・アルクス監督がいる。

 スイス人俳優では、「ヒトラー/最期の12日間(原題・Der Untergang)」(2004年)のブルーノ・ガンツがなんといっても一番有名だ。もちろん、初代ボンドガールを演じたウルスラ・アンドも知られている。ポップ・カルチャーに大きな印象を残し、映画で着たビキニが高値で落札され話題になった。

 ベルリン国際映画祭においてヨーロッパ映画プロモーション(EFP)(英語)からヨーロッパの若手俳優に与えられるシューティング・スター賞の受賞者外部リンクたちも映画俳優として成功している。たとえば、ジョエル・バズマン、カルラ・ユーリ、ケイシー・モッテ・クラインがいる。

 そして比類なき芸術家でデザイナーのH・R・ギーガー(2014年没)は忘れてはならない存在だ。彼は「エイリアン(原題・Alien)」(1979年)のエイリアンや宇宙船などのデザインでアカデミー賞視覚効果賞を受賞した。

国際的に成功したスイス映画

 スイス映画史上最高の映画は何だろうか。2016年8月に発表されたスイス映画100選外部リンクによれば、スイス映画史上最高の映画は「ハイジ」ではなく、人里離れた山奥に住む一家のシリアスドラマ「Höhenfeuer(仮訳・高山の炎)」(1985年)だ。

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 スイス国内で、これまで最も興行的に成功したスイス映画は「Die Schweizermacher(仮訳・ザ・スイスメーカーズ)」(1978年)だ。「Achtung, fertig, Charlie!(仮訳・ゴー・ゴー・チャーリー!)」(2003年)、「マルタのやさしい刺繍(原題・Die Herbstzeitlosen)」(2006年)、「Mein Name ist Eugen(仮訳・僕の名前はオイゲン)」(2005年)がそのあとに続く。スイスのフランス語映画で唯一トップ10入りしたのは「Les Petites Fugues(仮訳・ささやかな遁走)」(1979年)。国外で最も成功したスイス映画はおそらく、1880年にヨハンナ・シュピリが書いた小説を忠実に実写化した「ハイジ/アルプスの物語(原題・Heidi)」(2015年)だろう。

 2本のスイス映画がアカデミー賞外国語映画賞に輝いている。「La Diagonale du fou(仮訳・危険な動き))」(1984年)と「ジャーニー・オブ・ホープ(原題・Reise der Hoffnung)」(1990年)だ。

 アカデミー賞を手にした存命のスイス人俳優はいないが、映画プロデューサーのアーサー・コーン外部リンクは6度受賞している。映画監督のジャン・リュック・ゴダールは、2010年に名誉賞を授与され議論を呼んだが、彼は意味がないとして受け取らなかった。

 2013年、連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ/EPFZ)コンピューター・グラフィックス研究所の教授マルクス・グロスは、映画の煙や爆発を迅速に計算し、よりリアルに再現するソフトウェアを開発した功績により、映画の技術開発面で貢献した個人や団体に贈られるアカデミー賞の科学技術賞に輝いた。

 ベルリン国際映画祭が1956年以降現在の形になってから、金熊賞を獲得したスイス映画はない。ベネチア国際映画祭の金獅子賞も同様だ。カンヌ国際映画祭では「Die letzte Chance(仮訳・最後のチャンス)」(1945年)が、1946年にパルムドールを受賞して以降、スイス映画が同賞に輝いたことはない。

映画のロケ地としてのスイス

 グリンデルワルトの山々が「スター・ウォーズ エピソード3/シスの復讐(原題・Star Wars Episode III: Revenge of the Sith」(2005年)で惑星オルデランの背景に使われたように、あなたが好きな映画のなかには、気づいていなくても、スイスが登場するものがいくつかあるだろう。ロケーションコーディネーターは、ドラマチックな風景が大好きだ。

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 受賞ドキュメンタリー映画「運命を分けたザイル(原題・Touching the Void)」(2003年)では、ペルーのアンデス山脈で実際に起きた遭難からの生還劇が再現されているが、実は多くの場面が名峰ユングフラウで撮影された。ユングフラウがあるベルナーアルプスは、厳しい自然風景へのアクセスが比較的容易だからだ。

 映画「ジェームス・ボンド」シリーズで印象的な場面の数々も、スイスで撮影された。「女王陛下の007(原題・On Her Majesty’s Secret Service)」(1969年)で、ジョージ・レーゼンビー扮するボンドがシルトホルンで除雪機に向かって悪役を突き飛ばすシーンや、ティチーノ州ヴェルザスカ谷のダムから記録的なバンジージャンプをした「007/ゴールデンアイ(原題・Golden Eye)」(1995年)冒頭のシーンなどがある。

 そして、背景として使われるのは自然だけではない。ハリウッドの大ヒット作「ドラゴン・タトゥーの女(原題・The Girl with the Dragon Tattoo)」(2011年)は、チューリヒの5つ星ホテル「ザ・ドルダーグランド」で撮影された。ダン・ブラウン原作の映画「天使と悪魔(原題・Angels & Demons)」(2009年)のいくつかの場面はジュネーブ近郊の欧州合同原子核研究機構(CERN)で撮影された。

 さらに、過去20年余りの間に、200本以上のボリウッド映画がスイスで撮影されている。青々とした山の牧草地は、サリーを身にまとったガールフレンドに永遠の愛を告白する場面の撮影地に好んで選ばれる。また、インド映画お決まりの見事な振付けのダンスが撮影されているのを街の中心部で目にすることも珍しくない。

※このコンテンツは2018年1月時点のものです。今後は更新されません。

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