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スイス議会、イラン非難宣言を採択 政府批判も

デモ活動
スイス各地で抗議活動が起こる中、連邦議会は政府に対しイランへの追加制裁発動を迫っている © Keystone / Michael Buholzer

スイス連邦議会は先月27日、反政府勢力を弾圧するイラン政権への非難宣言を採択した。連邦政府に対し、欧州連合(EU)による制裁への追随を求める内容だ。

国民議会(下院)が採択した宣言外部リンクはイラン政府に抗議運動の弾圧をやめるよう求め、政治理由による拘留者全員の釈放、死刑制度の廃止、民主的な選挙の実施を要求した。

スイス政府に対しても、イラン資産の凍結や入国規制、禁輸などEUの全制裁に足並みを揃えるよう求めた。人権侵害に対する独立した国際調査に協力することも要望した。ただし宣言に拘束力はない。           

中立国スイスは、核開発や人権侵害を受け国連やEUがイランに科した制裁には既に追随している。またロシアにイラン製ドローンを製造・供給する事業者への制裁も導入した。

下院の採決では、賛成107票、反対71票、棄権5票だった。左派・中道派政党が賛成したが、右派の主要政党は反対票を投じた。

人権

左派・社会民主党(SP/PS)のファビアン・モリーナ議員は、同宣言は政府の対イラン政策強化を促すと期待する。同氏は「政府がこのメッセージを受け取り、行動を起こすことを願う」と話す。

下院は来週、スイスが各制裁措置を踏襲し、女性の権利など人権のために戦うイランの市民社会を支援することを盛り込んだ動議について審議する。

モリーナ氏は反対票を投じた急進民主党(FDP/PLR)への失望を隠さない。スイス外交政策の基本原則に関して、中道右派の大政党としての責任を回避していると批判した。

中央党のマリアン・ビンダー党首は、下院の外交委員会が起草した宣言文が女性の権利に関して明白なシグナルを送ると称えた。 同氏はスイス政府がイラン政府に迎合し、人権を守れていないと指摘し、「ロシアのウクライナ侵攻のときと同様、政府は議会から圧力を受けなければ行動を起こせないようだ」と憤る。

女性
Keystone / Abedin Taherkenareh

中立とは

右派・国民党(SVP/UDC)のイヴ・ニデッガー議員は下院で、宣言は役に立たず、単なる自己満足にすぎないと述べた。「米国が44年間にわたり非常に厳しい制裁を加えたが、イラン政権の立場は少しも変わらなかった。我々は冷静さを保つべきだ」

急進民主党のハンス・ピーター・ポートマン氏も、宣言が舞台裏の外交努力を台無しにすることへの懸念を示した。「それはスイス政府の信用を傷つけ、イランに対する挑発と見なされる可能性さえある」

下院で賛否が分かれたのは、宣言がスイスの中立性を損ない、紛争で仲介役の役割を果たせなくなる恐れについて見解が二分している現状を反映する。

外交

イグナツィオ・カシス外相は27日、ジュネーブで開幕した国連人権理事会に出席した後の記者会見で、スイスの対イラン外交を改めて擁護した。またスイスのナディーン・オリヴィエリ・ロザーノ駐イラン大使のイスラム寺院訪問は「外交活動の一環だ」と弁明した。先月、大使が全身を覆うイスラム教の衣服「チャドル」を着て寺院を訪れた際の写真がネット上で拡散し、批判が殺到した。

ただ、この事件をイラン政権が利用する一定のリスクがあることは認めた。

カシス氏はイランでのデモ参加者への弾圧に対し、スイス政府が繰り返し立場を明確にしてきたことを強調した。

また、イラン政権との対話を維持し、米国とイランの仲介役など、スイスの仲介外交を利用して交流を促進することが重要だと指摘した。

スイスはイランの現状が別の方向に進むことを望んでいるとも付言した。

カシス氏は、イランにおけるスイスの役割は必ずしも容易ではないことを認めた一方で「誰かが(双方の間で)メッセージを伝えなければならない」と語った。

抗議

イランでは昨年9月、イスラム教の服装規定に反したとしてクルド人女性のマフサ・アミニ氏が警察に拘束され、暴力を受けて死亡した。それ以来、スイスにいるイランの反政府派は、スイスの左派政党やNGOの支持を受けて各地で抗議運動を行ってきた。

先月27日には首都ベルンの連邦議事堂前に抗議団体が集まった。ジュネーブではイランのホセイン・アミール・アブドラヒアン外相のジュネーブ訪問に対し、群衆から反対の声が上がった。

アムネスティ・インターナショナルは同日、スイスの難民政策を批判し、一貫した対イラン政策を求める声明外部リンクを発表。「スイス当局が深刻な人権侵害国に人々を強制送還し続けることは容認できない」と述べた。

国旗
© Keystone / Peter Klaunzer

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