スイス政府が昨年、昨年欧州連合(EU)が人権侵害を理由に中国に対して発動した制裁に追随しないと決定したことを意図的に公表していなかったことが分かった。
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EUは2021年3月、中国での少数民族ウイグル族への不当な扱い外部リンクが人権侵害に当たるとして、新疆ウイグル自治区の幹部4人と治安対策などを担う1団体のEU内にある資産を凍結し、EUへの渡航・取引を禁止した。
EU非加盟のスイスは、EUの制裁に足並みをそろえるかどうかをケースバイケースで判断する。ドイツ語圏の日刊紙NZZ日曜版外部リンクによると、連邦政府は2022年12月9日、中国からの報復措置を懸念し制裁に追随しないことを決定。いくつかの法的問題が残っていることを理由に「現時点では公表しない」ことも決めたという。
制裁を管轄するスイス連邦経済省はNZZに対し、「連邦内閣(政府)はさまざまな外交政策や法的基準に基づき利益を検証した」と述べた。
報復を恐れる
EUは2021年、中国の個人や企業などに対して「テーマ別」制裁を課し始めた。最初の制裁は人権侵害が理由だったが、今年6月外部リンクにはロシアによるウクライナ侵略を支援する中国企業も制裁対象に追加した。前者に対する報復として、中国は即時に欧州の個人・団体に対し制裁を発動した。
駐ベルン中国大使の王世廷氏は昨年11月、スイスに対し制裁を課さないよう警告した。同氏は「両国間の友好関係を本当に気にかけ責任ある政治を行う者なら、誰も制裁には同意しないだろう」と語った。
スイス政府はNZZに対し、今後EU制裁に追従するかどうかについては「ケースバイケースで」決定すると述べた。
社会民主党(SP/PS)のファビアン・モリーナ議員は同紙に対し、2022年12月の決定は「遺憾だ」と述べ、今後透明性を向上するよう政府に注文した。
微妙な関係
「連邦内閣が何も伝えなかったという事実は、連邦議会が(対中制裁に加わらない)決定は物議をもたらすことを認識しており、それを隠蔽しようとしたことを示している」と同氏は述べた。
ただ他の政党は、スイスが中国政府を怒らせかねない措置を見送ったことに満足感と安堵を示した。
スイスと中国は定期的に人権をめぐる対話を開いていたが、スイスがウイグル族への「再教育」を批判したのを受けて中国側が4年間にわたり協議を拒否。今年ようやく再開された。
スイスは2021年、中国の人権状況に対する懸念の高まりを踏まえて対中外交方針を策定した。政府は今年、その有効性を検証している。
英語からの翻訳:ムートゥ朋子
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