スイスで選挙権の年齢を現行の18歳から16歳に引き下げる案が連邦議会を通過した。実現には国民投票が必要だ。
このコンテンツが公開されたのは、
スイス国民議会(下院)は16日、賛成99票、反対90票、棄権3票で投票年齢の引き下げ案を可決した。
支持した左派政党は、選挙権年齢の引き下げは若者と教育制度への信頼に関わる問題で、若者に政治や市民生活により強く参画するよう奨励する効果があると主張した。
これに対して右派政党は、スイスの成人年齢が18歳であることを踏まえると、混乱を招くと反論した。例えば16~17歳の若者は投票はできるのに立候補できないことになる。
下院は2020年秋に、ジベル・アースラン議員(緑の党)の選挙年齢引き下げ案を可決。全州議会(上院)も可決したが、法案化を担当した下院の国家政策委員会が否決を推奨して本会議に送り返した。今回、再び下院で可決されたことで、同委員会が憲法改正案の作成に入る。憲法改正案は強制的レファレンダム(国民投票)の対象になる。
州レベルも試行錯誤
州レベルでは投票年齢引き下げの試みがあるが、これまでに成功した例は少ない。ヌーシャテル州とウーリ州は引き下げ案を否決した。16歳以上に州レベルの投票権を認めているのは、ランツゲマインデ(青空議会)で有名なグラールス州のみだ。
一方、少なくとも5つの州で引き下げに向けた動きが進む。
チューリヒ州は議会が昨年10月に引き下げ案を可決し、今年5月の住民投票にかけられる。ベルン州やジュネーブ州でも続く見通しだ。
隣国オーストリアは10年前に投票年齢を16歳に引き下げた。16~17歳の投票率が上の世代を上回るという成功例となった。
(英語からの翻訳・ムートゥ朋子)
おすすめの記事
スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
このコンテンツが公開されたのは、
チューリヒ州の放射性廃棄物処分場建設計画が、正式な認可が下りる前から反対運動に直面している。
もっと読む スイスの核廃棄物処分場計画、反対派が国民投票計画
おすすめの記事
ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
このコンテンツが公開されたのは、
ビートルズのジョン・レノンさんが殺害される2カ月前にオノ・ヨーコさんから贈られ、その後盗まれた腕時計について、スイスの連邦最高裁判所はオノさんに時計の完全な所有権があるとの判決を出した。
もっと読む ジョン・レノンの盗まれた腕時計、所有権はオノさん スイス最高裁が認定
おすすめの記事
スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
このコンテンツが公開されたのは、
スイス証券取引所を運営するSIXグループは11日、英国の証券取引サービスプロバイダー、アクイス・エクスチェンジを買収すると発表した。今後、多角的取引システム(MTF)に参入する方針だ。
もっと読む スイス証取、英プロバイダーを買収 MTF参入へ
おすすめの記事
2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
このコンテンツが公開されたのは、
スイス連邦統計局は12日、2022年の1世帯平均の可処分所得はひと月6902フラン(当時レートで約95万円)だったと発表した。前年からほぼ横ばいだった。
もっと読む 2022年の可処分所得は約95万円 スイス統計局
おすすめの記事
CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
このコンテンツが公開されたのは、
今月30日、ロシアの研究機関とジュネーブに拠点を置く欧州原子核研究機構(CERN)との協力協定が終了する。研究者はCERNのプロジェクトに影響を及ぼすと警告している。
もっと読む CERNとロシアの研究協力協定、11月末に期限迎える
おすすめの記事
女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
このコンテンツが公開されたのは、
スイス・バーゼル大と英ダラム大が1989年から2002年の間にスウェーデンで初等教育を修了した75万人以上の生徒のデータを用いて行った調査で、女子生徒の方が多いクラスを出た女性はより多くの収入を得る傾向があることが分かった。
もっと読む 女子優位のクラスを出た女性は高収入の傾向 スイス調査
おすすめの記事
11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
このコンテンツが公開されたのは、
スイスアルプスで、季節外れの暖かさが続いている。スイスで最も標高の高い地点にあるユングフラウヨッホでは観測史上最高を記録した。
もっと読む 11月のスイスアルプス、季節外れの暖かさ
おすすめの記事
スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
このコンテンツが公開されたのは、
スイスで肉食をやめる人が増えている。植物性食品を推進するスイスベジ協会(Swissveg)は30日、スイスのベジタリアンやビーガンの数は過去5年間で約40%増加したと発表した。
もっと読む スイスでベジタリアン・ビーガン増加 若者・高学歴に多く
おすすめの記事
スイスを縦断するツルが過去最多
このコンテンツが公開されたのは、
スイス鳥類研究所によると、スイスでは今季、はやくも過去最多のツルが観察されている。なかには約800羽の大規模な群れもみられた。
もっと読む スイスを縦断するツルが過去最多
おすすめの記事
「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
このコンテンツが公開されたのは、
スイス南部ティチーノ州ルガーノの州刑事裁判所は23日、利己的な動機で他人の自殺を手助けしたとして、自殺教唆・ほう助の罪に問われた同州の元看護師の女(67)に条件付き罰金刑を言い渡した。
もっと読む 「金銭目的」で自殺ほう助 スイスの裁判所が元看護師に有罪判決
続きを読む
おすすめの記事
若者が政治に参加する理由とは?
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの若者の投票率は、国民の平均を大幅に下回っている。若者はどういう政治的テーマだったら投票所に足を運ぶのだろうか?投票率を上げるのに効果的な方法とは?
もっと読む 若者が政治に参加する理由とは?
おすすめの記事
16歳の選挙権、賛成?反対? 若者の意見
このコンテンツが公開されたのは、
スイスでは先月、多くの生徒が気候変動対策を求めてストライキをした。より強く政治に関わるために16歳から選挙権を与える案も浮上するが、若者の間でも賛否は分かれる。
もっと読む 16歳の選挙権、賛成?反対? 若者の意見
おすすめの記事
若者に投票させたい?隣国と豪州に見習え!
このコンテンツが公開されたのは、
若い気候変動活動家の動きが再び活発になってきた。9月末にはアルゼンチンからスイスの首都ベルンの連邦議事堂前広場、ケニア、ニュージーランドにいたるまで抗議活動が行われた。しかし25歳未満の若者の大部分は民主的手段にほぼ、または全く関心がない。
もっと読む 若者に投票させたい?隣国と豪州に見習え!
おすすめの記事
スイスの国民投票、低い投票率 本当に懸念すべき?
このコンテンツが公開されたのは、
年に4回国民投票があるスイス。実際に投票に行く有権者は平均して半数以下だ。しかし、それがこの国の直接民主制に悪影響を与えるのではないかと慌てる必要は(まだ)ない。
もっと読む スイスの国民投票、低い投票率 本当に懸念すべき?
おすすめの記事
都市が民主主義を守る!権威主義に対抗する欧州都市
このコンテンツが公開されたのは、
民主主義への圧力は世界的に高まっている。一方で、権威主義者やポピュリストへの対抗勢力として期待される動きが、ブダペスト、アムステルダム、ヘルシンキ、ローザンヌなどの進歩的な都市で生まれている。
もっと読む 都市が民主主義を守る!権威主義に対抗する欧州都市
おすすめの記事
「年配者への差別なくせ」スイスで国民投票目指す
このコンテンツが公開されたのは、
年配者の多くが、自分は冷遇・差別されていると感じている。こうした「年齢差別」を撲滅しようと、スイスで2件のイニシアチブ(国民発議)が提起に向け準備中だ。1つは年齢差別の撤廃を求めた内容で、もう1つは、高齢者のケアとそのコスト負担の在り方に焦点を絞ったものだ。
もっと読む 「年配者への差別なくせ」スイスで国民投票目指す
おすすめの記事
「子どもに選挙権を」 投票者年齢の不均衡への対抗策
このコンテンツが公開されたのは、
スイスの経済シンクタンク「アヴニール・スイス外部リンク」は、社会の高齢化に危機感を抱いている。年金制度や医療費など以前から懸念されている問題に加えアヴニール・スイスは、「長老支配」の傾向にある民主主義への影響に強い関心…
もっと読む 「子どもに選挙権を」 投票者年齢の不均衡への対抗策
おすすめの記事
クローテンのランツゲマインデ 民主制の制約を吹き飛ばす
このコンテンツが公開されたのは、
スイスと世界を結ぶ玄関口、チューリヒ・クローテン空港の昨年の利用客数は3100万人を上回った。このスイス最大の国際ハブ空港を抱えるクローテン市が、直接民主政治の原型、ランツゲマインデ(青空議会)を復活させた。その新しい解釈は、今後の指標となるものだ。
もっと読む クローテンのランツゲマインデ 民主制の制約を吹き飛ばす
おすすめの記事
投票は16歳から
このコンテンツが公開されたのは、
多くの州で有権者の年齢の引き下げが検討される中、グラールス州のこのほどの決定は、先駆的。今後、他の州においても有権者年齢の引き下げ問題が活発に論議されることになるだろう。 グラールス州のランツゲマインデでは大雨の中、ほ…
もっと読む 投票は16歳から
おすすめの記事
政治に関心を向ける「グレタ世代」の若者たち
このコンテンツが公開されたのは、
若者は全般的に政治に「無関心」だ。しかし空気が変わりつつある。スイス13の都市で今年2月、4万人弱の市民が早急な温暖化対策を求めてデモを行い、大勢の若者が参加したのだ。実際のところ、若者の政治参加はそれ以前から目立ち始めている。
もっと読む 政治に関心を向ける「グレタ世代」の若者たち
swissinfo.chの記者との意見交換は、こちらからアクセスしてください。
他のトピックを議論したい、あるいは記事の誤記に関しては、japanese@swissinfo.ch までご連絡ください。