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危険人物の情報共有「不十分」 スイス議会で見直し論

仏ストラスブールで11日起きたテロの犠牲者に手向けられたロウソクや花
仏ストラスブールで11日起きたテロの犠牲者に手向けられたロウソクや花 swissinfo.ch

スイス連邦議会の安全保障委員会は危険人物の監視を強めるよう求めている。仏ストラスブールで起こったテロの実行犯がスイスの刑務所に入っていた人物だったことが分かったためだ。

安全保障委員会外部リンクのヴェルナー・ザルツマン委員長(国民党)は、対テロの取り組みにおける欧州各国との協力は「十分でないように思う」と述べた。

ストラスブールのクリスマスマーケットが11日に銃撃され死者3人と負傷者12人が出た事件で、シェリフ・シェカット容疑者(29)が数カ月間スイス北部・バーゼルの刑務所に収監されていたことが明らかになった。ザルツマン氏のコメントはこの事実を受けたものだ。

同氏はシェンゲン協定の加盟国間でのデータ共有システム(SIS)がうまく機能していないと指摘。「早急に対策を立てる必要がある」とドイツ語圏のスイス公共放送(SRF)に語った。

現在、欧州当局は危険人物の情報を共有しているが、ザルツマン氏は「自動的に共有されているわけではないようだ」とみる。安全保障委でSISがストラスブールの事件でどう機能するのか、来年初頭の委員会で精査すると話した。

SISがすぐに改変されるかどうかは分からないが、ザルツマン氏は少なくとも反テロ法を強化すべきだと主張する。ただ怪しい人物を「危険人物リスト」に載せるだけでは意味がなく、例えば監獄の外で生活する服役者が着ける位置追跡装置付き足輪に至るまで、詳細に観察しなければならないとも指摘した。

スイス連邦警察のニコレッタ・デラ・ヴァッレ長官はシェンゲン協定加盟国との協力はうまくいっていると話す。SFRに対し、SISはスイスと欧州の警察にとって最も重要な捜査手段だという。

「どんな場合でも、ノルウェーからシチリアまで全ての警察がSISから情報を得ることができる」(デラ・ヴァッレ長官)

同氏は危険人物への対処には「国際的な取り組み」が必要だとし、予防措置に重きをおくべきだと話す。「犯罪者が警察に来たときには既に時遅しと、前から口を酸っぱくして言っている」

シェカット容疑者は11日に発砲する前にアラビア語で「アラーは最も偉大だ」と叫んでいたことから、仏警察はテロ事件として捜査。13日にストラスブール南部の路上で発見され、射殺された。

スイス当局も事件を受けて国境の取締りを強化している。13日朝はバーゼル発チューリヒ行きの列車が、容疑者に似た人が乗車しているとの乗客からの届け出を受けて一時停車した。通報は誤りだった。

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