スイスで1970年代まで、貧困や家庭環境が劣悪などを理由とした行政の強制保護措置で子供たちが親元から引き離され、引き取り先で虐待や重労働を強いられていた問題で、政府の補償制度がようやくスタートした。しかし被害者の多くはつらい思い出を掘り起こされるのを嫌がり、申請を断念している。
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スイスでは70年代まで、貧しい農村部や家庭環境が劣悪であるなどの理由で、子供たちが行政に強制的に「保護」され、養護施設や里親の下に送られた。しかし、引き取られた先の農場や施設で過酷な労働を強いられたり、性的虐待を受けたりしていた。これらの子供たちはドイツ語で「Verdingkinder(奉公に出された子供たち)」と呼ばれた。
このほかにも、「落ち着きがない」「反抗的」「扱いが難しい」などの理由で、行政が精神病患者施設などに隔離した若い男女もいた。一部の女性は強制的に避妊手術を受けさせられ、未婚の母親は子供を養子に出すよう強制されたという。これらの制度は欧州人権条約批准後の81年に廃止された。
この問題を受けて連邦政府は被害者に最高2万5千フラン(約270万円)を支払う補償制度を立ち上げ、当初の予定通り今年3月末で受付を締め切った。
連邦政府は正確な統計はないものの、申請者の数を1万~1万5千人に上ると見込んでいた。ところが連邦司法警察省がスイス公共放送(SRF)に語ったところでは、3月末時点の申請者は7839人だった。
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あえて申請しなかった被害者も数え切れないほどいた。司法警察省の担当者クラウディア・シャイデッガー氏はSRFに「(被害者たちが)そう決断したのなら、それを尊重しなければならない。申請したくない被害者もいるだろう」と話す。彼らはつらい過去をほじくり返されることを望まず、当時の思い出についても語りたくないのだという。
この問題を担当する同省のルチウス・マダー事務次官代理は独語圏日刊紙ターゲス・アンツァイガーに対し、一部の被害者たちは「自分の過去を恥ずかしいと思う」、または「味わった苦しみはお金で解決できる問題ではない」と考え申請を断念したのではないかと語った。さらに「お金などいらないと思ったか(つらい目にあわせた)国ともう関わりたくないという思いもあったのでは」とも述べた。
(独語からの翻訳・編集 宇田薫)
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