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職業技能を競うスイスの若者たち

2 Swissskills team members
スイススキルズチームのメンバー、パン製造のソニヤ・デュラーさん(左)と洋菓子製造のラヘル・ウェーバーさんは準備万端だ SwissSkills/Efeu_c_

職業技能を競う国際大会に備えて、スイスの代表選手はどのように準備を整えるのだろう?ロシアで開催される国際技能競技大会(通称 :技能五輪国際大会)に向けて準備を進めるスイス代表チームの選手に話を聞いた。

7月末の暖かい土曜日。スイス代表チームの選手たちは、スポンサーの1社である、ルツェルン近郊エンメンにある総合防衛航空宇宙企業ルアグ(RUAG)の敷地に集まっている。国際技能競技大会前の最後の集まりで、大会に必要な資材の積み込みが行われる。

国際技能競技大会外部リンクは2年に1度、世界のさまざまな場所で開催される。目的は、美容・理容から建具、電子機器、建築大工まで、幅広い職種において最高の技能を持つ若者を選ぶことだ。今年の大会は8月22日から27日まで、ロシア西部のカザンで開催される。60カ国以上から1500人以上が参加する。

スイス代表チームの選手は全員22歳以下の41人で、40職種で参加する。前回、2017年の技能五輪アブダビ大会で、スイス代表チームは中国に次ぐ2位という過去最高の成績をあげたこともあり、チームにかかる期待は大きい。

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22歳以下限定で職業技能を競う国際技能競技大会(World Skills Competition)は今年、世界63カ国から1300人以上が出場しました。⁠ *⁠ 日本からは54職種に48人が参加。金メダル2つを含む、11競技でメダルを獲得しました。⁠ *⁠ 40職種に41人が参加したスイスは金メダル5つを含む、16競技でメダルを獲得しました。⁠ *⁠ ベルン州ムーティエ出身のローリス・グラウザーさんはスイス代表として、左官・塗装部門で出場し、銅メダルに輝きました。映像ではスイス公共放送フランス語圏RTSが大会前、準備にどう取り組んだのかグラウザーさんに話を聞いています。⁠ *⁠ 大会の前身は1950年、第二次世界大戦後の技能者養成と国際親善を目的としてスペインのマドリッドで開催されました。1953年、大会は再びマドリッドで開かれ、貿易を学んだスイス、ドイツ、フランス、英国、ポルトガル、モロッコ出身の青年が技能を競い、多国間大会に昇格。日本では「技能五輪国際大会」という通称でも広く知られています。⁠ *⁠ 2019年のロシア大会は8月29日~9月3日まで開催。出場者は建設、情報処理・技術、デザインなど幅広い56職種で技能を競い合います。⁠ *⁠ スイス代表団についての詳しい記事はアカウントプロフィールのLinkin.bioからご覧になれます。⁠ *⁠ #education #learning #career #workexperience #aspiration #learn #worldskillskazan2019 #Switzerland #Swiss #handcraft #switzerland #schweiz #handcrafted #handmade #crafts #artisan #国際技能競技大会 #技能五輪国際大会 #ものづくり #JAVADA #職業 #能力 #技能 #キャリア #教育 #スキル #就職 #国際大会 #ロシア #カザン外部リンク

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選手たちはルアグの社員食堂で暖かい歓迎を受ける。壁に張ってあるのは、同社の成功を謳ったポスターだ。ルアグは昨年、スイス国内の優秀な職業訓練生を選ぶ全国大会「スイススキルズ(SwissSkills)」のベルン大会で、メダルを4つ獲得した。スイススキルズの優勝者の多くはスイス代表チームのメンバーになった。

赤と黒のTシャツの海

食堂に集まった全員が代表チームのTシャツを着ている。若者たちは赤色、その指導に当たった各職種の専門家で、カザンに同行する43人のベテランは黒色のTシャツだ。

スイス代表チームを取りまとめるスイススキルズ財団のウエリ・ミュラー事務局長も黒色のTシャツを着ている。ミュラー事務局長は、まずは材料と道具の積み込みを行うとその場で説明した。

最初のグループに同行して積み込みエリアへ向かうと、大型トラックに乗せてカザンまで約3500キロメートルの旅をする木箱の準備がされていた。資材の到着には1週間かかる見込みだ。

家具作り職人

道具の準備をしている人々の中に、家具作り部門のスイス代表で、トゥールガウ出身の19歳のサマンタ・ケンプフ外部リンクさんがいる。キッチンメーカーのヘルツォーク(Herzog外部リンク)での職業訓練で最終年を迎えている。

サマンタ・ケンプフさんと資材の箱
サマンタ・ケンプフさんと資材の箱が会社のトラックに積み込まれる swissinfo.ch

ケンプフさんは、大会では1つの家具を図面通りに22時間以内に仕上げる外部リンクことになっていると説明し、「とても楽しみだ。忘れられない特別な経験になるだろう」と話す。

ケンプフさんは3月から、師匠の指導を受けつつ大会に向けた訓練に専念してきた。「カザンでも練習通りにできれば良い。良い成績を収められれば」と意気込む。

家具作り職人のケンプフさんはスイス代表チームに選ばれた女性12人のうちの1人で、通常は男性的と考えられている分野での参加だ。ケンプフさんは、自分の例が、このような職業を選ぶ他の若い女性たちの後押しになることを期待している。

最も高価な道具

カザンに運ばれる最も高価な道具は、CNCフライス盤の種目外部リンクに出場するマルクス・ヒンテルマン外部リンクさんのものだ。コンピューター制御のフライス盤を用いて、金属その他の固形素材の形状加工が行われる。このような機械は例えば自動車やスマートフォンの部品の製造に用いられる。 

準備した箱の横に立つマルクス・ヒンテルマンさん
準備した箱の横に立つマルクス・ヒンテルマンさんと師匠のユルク・マルティさん swissinfo.ch

なかなか説明が難しい技能だと、グラウビュンデン州出身のヒンテルマンさんは自分の箱が積み込まれるのを待ちながら笑顔で話す。大会では、設計図を見てプログラミングをし、CNCフライス盤を使って形状加工をするという。「精密性がとても大切な仕事だ」と説明する。

スイススキルズ全国大会で金メダルを獲得し、クールのハミルトン・ボンデュズ外部リンク社で働くヒンテルマンさんは、カザンでベストを尽くしたいと願う。ヒンテルマンさんも集中的に訓練してきた。「準備はできていると思う」

代表チームの目標と「大使」の役割

積み込みを監督しているのはミュラー事務局長外部リンクだ。「材料は35箱、約10トンに及び、総額で72万5千フラン(約7882万円)分の価値がある」と最初のグループのチェックを終えて話してくれた。 

スイススキルズ財団のウエリ・ミュラー事務局長とれんが積み部門で参加するジェローム・フグさん
スイススキルズ財団のウエリ・ミュラー事務局長とれんが積み部門で参加するジェローム・フグさん SwissSkills/ Efeu_c_

ミュラー事務局長もカザンでの好成績を期待している。「近年、スイスはずっと世界トップ3に入っている。今回もそうなること、そしてもちろん、代表チームのメンバーが皆ベストを尽くせることを望んでいる」

代表チームは6カ月ほど前から集中的な訓練を行なってきた。「一流スポーツ選手のようなものだ。技能の訓練だけでなく、報道対応の訓練もあるし、精神衛生の面での訓練もあるし、チーム育成やスポーツもする。競技なので、一流スポーツと同様、身体的コンディションを整える必要がある。十分な準備が重要だ」(ミュラー事務局長)

職業教育・訓練制度はもちろん、スイスの代名詞ともいえるものだ。この制度で訓練生は1〜2日専門学校に通い、残りの日は企業で研修を受ける。スイスでは義務教育を修了した生徒の3分の2が選ぶ道だ。

ミュラー事務局長はこう話す。「チームのメンバーには、『君たちは職業教育・訓練制度の大使なのだ』と話している。それをとても誇りに思っている」

国際技能競技大会

職業技能を競う国際競技会。スイスは1953年にスペインで開催された初回より参加している。

参加資格は22歳以下で、全国大会または地方大会の優勝者。スイスチームの取りまとめを行うスイススキルズ財団は、さまざまな職種のスイス全国大会を開催し、国際技能競技大会への参加チームを編成する。

第45回国際技能競技大会はカザンで8月22日より27日まで開催される。スイスインフォは大会終了後に結果を報告する。

(英語からの翻訳・西田英恵)

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