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高齢層と若年層に忍び寄る貧困

チューリヒの高級ホテル「マリオット ( Marriott ) 」で一足早くクリスマスを祝う人々。エルンスト・ジーバー牧師が率いる福祉団体とホテルが主催して、生活に困っている人々を招待 Keystone

スイスには貧困線上で生活している高齢者が4万5000人いる。彼らにとっては、眼鏡が割れただけでも大変な心労だ。

社会的に恵まれない環境にある学齢前の幼児は、プレイグループ ( 幼稚園入園前の幼児が母親とともに集まる会 ) に預ける機会を逃してしまうと大きくなってから就職に苦労したり、低給の職にしかつけなかったりして出世の見込みを絶たれてしまうことにもなりかねない。

隠れた問題

 12月上旬、貧困撲滅という同じ目標を持つスイスの7つの組織がベルンに集まり、2010年の「貧困と社会的排除の撲滅・ヨーロッパイヤー」に向けた戦略や期待を発表した。

 高齢者の活発な活動を支援する組織「プロ・セネクトゥーテ ( Pro Senectute ) 」のヴェルナー・シェラー氏は「貧困の中で暮らす年金生活者は隠れた問題だ」と言う。
「わが組織のソーシャルワーカーは昨年、3万5000人の高齢者を支援しました。うち半数は金銭的な問題を抱えていました。それなのに、マスコミが伝える年金生活者のイメージはいまだに非常に快適なライフスタイルを送る、余裕がたっぷりの富裕層といったものなのです」

 このような困窮者のほとんどは女性や一人暮らし、あるいは外国からの移民だという。プロ・セネクトゥーテは来年、攻勢に転ずる計画を立てている。
 

悩みの家賃

 「政治レベルでずっと推進している活動があります。金銭的援助の金額を計算するときに家賃の最高限度を考慮することもその一つです。この最高金額は2001年以降ずっと変わっていません。もちろん、家賃はかなり上昇していますが」
 とシェラー氏。

 「安いアパートはほとんどなく、多くの人にとって引越しは論外。そのため、結局家賃の不足額を日々の予算から削り取ることになり、節約を余儀なくされるのです」

 スイスの市町村から成る組織「市町村イニシアチブ・社会政策」の社会政策部長を務めるルエディ・マイヤー氏は、これまでの間、低所得世帯に対する所得支援の拡張を弁護し続けてきた。この案件はようやく来年の国会で決議されることになった。

 「子どもや学生に対する手当てはありますが、ワーキングプアにより良いサポートを与えるための社会政策が欠けているため、貧困層は社会福祉を当てにすることができないのです」
 とマイヤー氏は批判する。

 さらに
「小額の年金しか受け取ることができない高齢者や障害者手当てを受け取っている人々にはすでに金銭的な援助が行われています。ですから今、低所得世帯に対する支援を訴えているのです」
 と付け加える。

仕事の能力

 マイヤー氏はまた、失業者や社会福祉の受給金に頼っている人々の中には移民がが非常に多いことを強調する。
「スイスへ移住してきた移民の学歴や職歴はこれまでずっと低かったのですが、この事実はその反映だといえます。仕事の能力と貧困の間には明らかな関連があります」

 「それでもここ数年間は、欧州連合 ( EU ) から優秀な人材がやってくるようになりました。彼らに関する失業統計や貧困に関する指標はスイス人のそれと変わりがありません」
 能力が不足している移民の子どもたちは十分な教育を受けられる状況にあることが特に大切だとマイヤー氏は言う。

隔絶

 また、教育に関してマイヤー氏は次のような問題を挙げる。
「移民としてやってきた子どものうち高等教育を受けているのはごく少数です。スイスの学校は、社会層や国籍によって子どもを非常に厳しく分け隔てているのです」

 貧困を防ぐ最も大切な予防策は早い時期に始めなければならない。
「子どもにとっては、プレイグループやデイケアの中で地元の言語をできるだけ早く習得することが何よりも大切です」

 給食を出し、放課後子どもの世話を行っている小学校も融和を支持している。子どもたちはさまざまな環境でさまざまな国語に接しているからだ。
「しかし、ここで終わりというわけではありません。恵まれていない家庭の若者が学校からさらに別の教育や職業訓練へと移行するとき、また職業訓練から一人前の社会人へと移行するときのサポートも欠かせません」

クレア・オディア、swissinfo.ch
( 英語からの翻訳、小山千早 )

経済協力開発機構 ( OECD ) によると、スイスの子どもの9.3%が相対的貧困の中で生活している。

年金生活者のうち12%は負債を抱えることなく生活するために金銭的援助を必要としている。しかし、その中の3分の1、約4万5000人は援助を受けていてもなお貧困生活を強いられている。

一人親家庭の1割は「ワーキングプア」。低収入のため、通常の労働時間通りに働いても相対的貧困から抜け出せない。


2006年には一人親家庭の18%が生活保護を受けていた。

「異なった視点から」‐福音教会援助団体「ヘクス ( HEKS ) 」による社会融和ウィーク。6つの市で、失業、言語習得、環境適応、身分証明証のない人の移住を扱う催し物が開催される。3月22日から27日まで。

「もしも ( If only ) 」‐生活保護に頼る人々がそれぞれの生活について語ったビデオを紹介する移動展示会。豊かな国にある貧困の実態を明らかにすることが目的。4月13日にベルンでスタート。

「若者を集めて」‐社会的排除と闘うためにさまざまな背景を持った若者500人を集める。援助団体「4つ目の世界 ( Quart Monde ) 」が組織。7月9日から11日まで。

高齢の移民の生活に焦点を当てたナショナルデー。「年齢と移住のナショナルフォーラム ( the National Forum Age and Migration ) 」、「プロ・セネクトゥーテ ( Pro Senectute ) 」、「スイス赤十字社 ( Swiss Red Cross ) 」が組織。11月30日。

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